トウヨシノボリ (1)

(トウヨシノボリ縞鰭型)

Rhinogobius  sp. OR (orange)

 トウヨシノボリはヨシノボリの中でも最も地域変異に富む種類で、多くの”型”に分類されつつあります。 また、外見上の特徴のみでなく生息地ごとの生態も様々で、将来複数の種類に分類されるであろう集団もあります。 このことは各地のトウヨシノボリが地史上あるいは分類学上重要な特徴を持って生息していることを示していますが、近年の魚種移入の影響を受けて特徴が失われてしまう危険性にも直面しています。 種として希少視されない本種のような種類にも絶滅の危機に瀕している魚がいることを忘れてはいけませんね。

 

外見の特徴

 このタイプの外見を持つ集団は主に2つ考えられ(トウヨシノボリ[縞鰭型]とビワヨシノボリ[仮称])、成熟したオス以外では相当に観察慣れされた方にしか判別ができないようです。 2つの集団に共通して、オスの第1背びれは伸びず、メスと同じような形をしています。 第2背びれと尾びれ中央部には縞模様が入りますが、この模様の濃淡は様々なようです。 下唇は水色に、あごの下からエラの下にかけて鮮やかなオレンジ色が現れます。 尻びれと尾びれの下方は朱色に染まり、下方の縁は水色に光ります。 オスの婚姻色は全体的に墨色になり、2つの背びれにもこの色が出ます。 ただし両背びれの縁は金白色に光り、第1背びれには部分的に青い色が現れることもあります。 ビワヨシノボリ(仮称)ではさらに第2背びれと尻びれが著しく伸び、独特の姿になります。 メスではどちらのタイプも体側に縞模様が現れ、背びれと尾びれに縞模様がある意外には目立った特徴は見られません。 

 

 

分布状況

 この2タイプは本来共棲しているところがないため、分布域による判別が可能です。 トウヨシノボリ(縞鰭型)は近畿・瀬戸内地方に、ビワヨシノボリ(仮称)は琵琶湖に生息します。 ただし、アユなどの他の魚の移入に混じって各地に広く移入され、本来生息しない地域で発見される例もあり、移入先での遺伝的なかく乱が生じ始めているようです。 私が飼育している個体も雑魚コーナーから購入したものなので、どちらのタイプなのか、どこに生息していた魚なのか、さらに移入先で採集された個体なのかもわかりません・・・。

 

生活

 

 

トウヨシノボリ(縞鰭型)はため池などの止水域を好んで生息するようです。 一方ビワヨシノボリ(仮称)は琵琶湖で季節に応じた回遊生活を送っているようで、沖合いや深みに生息する時期と、おそらく産卵のために岸近くに上がってくる時期があるそうです。 実際の生息地を見ていないのでなんとも言えないのですが、いずれにしても他のヨシノボリとは異なる環境を好む種類のようですね。 また、フワフワと中層をホバリング(浮遊定位)する様子が多く見られるのも止水域を好む魚だからかもしれません。 

 

 

 

飼育 

 

生息環境に合わせて止水か水流が弱い環境での飼育が良いと思われます。 特に気にしなくても水槽内で流れの弱いところに縄張りを作るようになると思いますが、同じヨシノボリでも同種に対しては一層マメに威嚇するので、たくさん飼育すると流れのあるところなどの本来好まない場所に追いやられて弱ってしまう個体が出てきます。 したがって、目隠しと隠れ場所を兼ねた障害物を多めに配置してあげた方が良さそうです。 メスでも闘争心は強く、複数種のヨシノボリを混泳させると自分より大きな他種にも攻撃を食らわす様子が見られます。 しかし、それほどしつこくはないので、追われた魚が障害物の向こうに行って見えなくなるとそれ以上は追いかけません。 

エサは何でも良く食べますが、冷凍アカムシを与えると水面まで我れ先にと一直線に食べに来ます。 フレーク状のエサも食べる気はあるようなのですが反射的に吐き出してしまうなど、アカムシを食べるのに慣れていると食べづらいエサもあるようです。 

 

ヨシノボリの中でも好奇心と負けん気が強い本種のオスは、水槽越しに見ているとこちらに向かって威嚇してくることもあります。 そんな愛らしい種類のヨシノボリですが、ゴチャ混ぜで売られている水槽では本種のひれが真っ先にボロボロにされるようで、気の毒になってしまいます。 そういう水槽を店頭で見かけると身近な環境に住む本種のような魚は存在が軽視されているように思えてなりません。 ヨシノボリは地域による変異がまだわかりやすい方の魚だと思いますが、ほかのあらゆる川魚も川ごとに別の集団と考えるような意識を持たなくてはなりませんね。

 

 

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