ニューカレドニア産ナンヨウボウズハゼ属の一種
Stiphodon rutilaureus

外見の特徴
ナンヨウボウズハゼの仲間は地域によって分布する種類も異なっていますが、例えばコンテリボウズハゼとよく似たS. semoni という魚がインドネシアに分布していたり、ニジイロボウズハゼ類はよく似た種類が太平洋各地に分布するなど、形態的にある程度の系統性が見られます。 本種はその中でも南半球に分布する系統の一種と思われ、日本に分布するどの種類とも別の系統の魚です。 体長はナンヨウボウズハゼと同じくらいで、同属の魚の中でも比較的小型の種類のようです。
婚姻色が引いているときのオスです。 この状態でも背びれや尻びれ、尾びれの模様は美しく、インパクトのある魚です。 第1背びれが鎌状に長く伸びますが、ナンヨウボウズハゼとも形が異なっています。 尻びれの端部が鳥の翼のようにギザギザした形なのも特徴的です。
オス第1背びれが鎌状に尖って伸びますが、形としてはナンヨウボウズハゼのものとも異なっています。 第2背びれや尻びれは、同属の他種では平行四辺形に近い形のものが多いのに対し、本種は扇形のような形をしており、体の大きさに対して背びれと尻びれが大きく見えます。 また、尻びれの端部は翼のような独特の波型になっています。 胸びれには明瞭な点列模様があります。
頭部は同属の他種と同様に青緑に輝き、背面側の鱗は雌雄ともに胸びれよりも前方まであります。 第1・第2背びれと尻びれは美しい水玉模様で、特に第2背びれは婚姻色が出ていないときでも地色が黒く、水玉模様は青白く輝きます。 尾びれは全体的に赤橙色に染まり、端部は青白く光るほか、特徴的な模様として、上端部の少し内側、尾柄部の上端の延長線、下端の延長線の3本の青白い線があります。
体の側面にはえらの後ろから尾柄にかけて赤橙色の斑点が一列に並び、その背中側には青白く光る鱗が一列並んでいます。 婚姻色が出ると頭部が青く輝き、体は全身が赤く染まり、大変美しい姿になります。 また、胸びれの点列模様も赤色になります。
一方、メスはナンヨウボウズハゼ属のメス特有の黒い縦縞のある体色をしており、この黒い線が濃く出ているときは、尾柄部が黄橙色を呈します。 しかし、他種のメスに比べると体調や気分によって縞模様が淡くなることが多いようで、そのときはえらの後ろから尾柄にかけて1本の帯状をなしていた黒線が、オスの赤橙色の斑紋に類似して、一列に並ぶ暗色の斑点になります。 また、メスも胸びれに明瞭な点列模様があり、第1背びれ、第2背びれのほか、体色が濃いときには尾びれにも点列模様が現れます。
分布状況
ニューカレドニアのほか、ニューギニアやバヌアツの河川などにも生息するようです。 ニューカレドニアには本種のほかに少なくとも同属の他種が2種は分布しているようですが、同所的に見られる種類があるのかどうかは不明です。
生活
メスのひれの点列模様のパターンはオスと似ていて、胸びれ、第1・第2背びれに点列模様が見られます。
河川の中流域に見られ、環境としては日本のナンヨウボウズハゼやコンテリボウズハゼと同じような環境に生息しています。 ただし、淵よりも平瀬を好む傾向があるようです。 オスは単独で、メスは数匹の群れで行動している点も、ナンヨウボウズハゼに似ています。
雌雄ともにあまり頻繁に泳ぎ回ることはせず、落ち着いて行動している印象を受けます。 観察したのが繁殖期のピークではなかったこともあると思いますが、オスでも特に決まった縄張りを意識して生活している様子はありませんでした。
河川ごとの環境にもよるのだと思いますが、日本のナンヨウボウズハゼに比べると警戒心が弱く、観察も容易に行えます。 追ってもあまり遠くに逃げていってしまうこともなく、少しずつ移動してこちらの様子を見ているようでした。 わずかなエリアでしか観察をしていませんが、ナンヨウボウズハゼ属のほかの魚は同所的には見られず、生息環境の違いで住み分けているのかもしれません。
飼育
婚姻色が出たオスは大変美しく、赤橙色に染まった体に青白い鱗が一列並んでいます。 なお、その延長で尾びれに走る青白い線は、この個体のようにまっすぐ伸びるのが普通のようで、このページの他の写真のオスのように歪んだ形の線になる個体は珍しいようです。
平瀬に見られる魚なので水流などの具合を心配しましたが、体の大きさに合った小さな水槽でも飼育は可能です。 特に水流が強くない環境でも産卵行動をするのが観察されました。 慣れてくると警戒心も弱まり、水槽での姿を容易に撮影させてくれます。
しかしながら、高温か酸欠、水質などがどうも日本での飼育環境と合いづらかったのか、原因不明のまま亡くなった個体もいて、個人的には課題が残っています。 これはニューカレドニア産のほかの魚たちにも傾向としてはありました。
エサはやはりナンヨウボウズハゼと同じように雑食性ですが、口の構造が動物性のものに向かない種類なのか、赤虫などよりもプレコ用フードを好んで食べているように見受けられます。
求愛行動はナンヨウボウズハゼよりもニジイロボウズハゼやコンテリボウズハゼのものに似ていて、オスは背びれや尻びれ、尾びれをいっぱいに広げて、メスに盛んに誇示します。 美しい婚姻色の出たオスはメスや同属の他種を激しく追い回すようになるので、視界を遮る障害物はやはり置いた方が良さそうです。 しかし、メスのひれを直接傷つけてしまうような激しい攻撃はしません。
他の魚と一緒に飼育することもあまり問題は無く、同属の魚でなければ闘争もしないようです。 ヒナハゼの仲間やエソハゼ類などの小型のハゼのほか、変わった組み合わせとしてはジュズカケハゼの仲間とも問題なく飼育できています。 オスの体色も美しく、海外の魚らしく警戒心が弱いこともあり、いろいろな生態をじっくり観察させてくれる魚です。
★★★ ニューカレドニア産ナンヨウボウズハゼ属の一種 ピクトリアル ★★★
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体色が濃く出ているときのメス。 尾びれにも点列模様があり、尾柄部が黄橙色に染まっています。
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こちらは求愛行動中のオス。 とても美しい色が出ています。 顔の青色も、体の赤さによってさらに引き立っています。 また、第2背びれの漆黒に浮かび上がる青白い点や線の模様は強烈です。 第2背びれと尻びれは同属の他種に比べると体のわりに大きく見えて、より強いインパクトを与えています。
尾びれは体と同じ赤にべったりと染まっていて、そこに浮かび上がる青白い線の模様がとてもきれいに目立ちます。 日本のナンヨウボウズハゼよりも赤みが強い色になるので、やはり日本にはいない魚という雰囲気を感じさせてくれます。 しかもこの魚は同属の他種のどれにも似ていないという興味深さもあり、こういう魚がいるからこそ海外のボウズハゼへの興味は尽きません。 ちなみに、ナンヨウボウズハゼは日本のハゼ好きとしては見慣れている魚ですが、海外に類似した種類がいない、独立した特徴をもつ魚の一つです。
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