オオヨシノボリ

Rhinogobius  sp. LD (large dark)

 

外見の特徴

 こちらは若いメス。 目の後ろから後頭部にかけての流れ紋や胸びれのオオヨシ斑、頬の前方が淡い色になるなど、オオヨシノボリらしい特徴を持っていますが、尾びれ基底部のオオヨシ斑は微妙に湾曲しているように見えます。

 種は名前のとおりにヨシノボリとしては大きく成長する以外には明瞭な特徴に乏しいため、しばしばトウヨシノボリやルリヨシノボリと混同されます。 雑な放流事情の影響を受けていることが危惧される集団もあり、そういった集団では特徴も不明瞭なものになっているようです。 種の外見的な特徴としてまず目立つのは、左右の胸びれの基底部に一つずつある黒い斑点(以下、当サイトでは「胸びれのオオヨシ斑」と呼びます)でしょう。 の斑点は基底部に向いた前方後円墳のような形のものが典型的なもののようですが、長方形に見えるものが存在する場合があったり、小さい斑点が見られることはトウヨシノボリなどでもあることから、やはり決定的な特徴とは言えないかもしれません。 に、尾びれの根元にひとつある太い黒色横帯(以下、当サイトでは「尾びれ基底部のオオヨシ斑」と呼びます)も特徴的なところです。 びれの基底部に背中側から腹側まできっちり沿って黒帯があるものが典型的なもののようですが、尾びれとの間に淡い色の部分があったり、上下端まで完全でなかったりする個体、あるいは集団もあります。 ういった不明瞭な特徴を持つ個体群が、そのような特徴を保持してきたオオヨシノボリ集団なのか、あるいは何らかの交雑の影響を受けたものなのかは判然としません。 はこのほかにも本種らしさを感じる斑紋はいくつかあり、例えば目の後ろから頭頂部にかけて流れ紋のような縦帯が並ぶ様子や、頬の前端部、口の両脇に淡い色の模様が現われること、などが挙げられます。 スや若魚の第1、第2背びれや尾びれには黒い点列が並びます。 の点列はオスでは成長するにつれて不明瞭になるか、消失していきます。 スの第1背びれは鎌状に伸び、端部は金色を帯びた白色で、中央のやや前方あたりに青色の斑点が現われます。 1背びれが伸びるとされるヨシノボリは多くいますが、その形状は微妙に異なるように思います。 れは、第1背びれの3条目が長く伸びるかどうかによるのだと思いますが、本種の場合は第3条があまり長く伸びないものをよく見かけます。 たがって、第3条が長く伸びるために第1背びれが直線的に長く伸びて見えるルリヨシノボリなどと違って、やや湾曲して後方に向かって伸びて見える個体が多いように思います(このページのトップの写真参照↑)。 ちろん、すべてがそうだとはとても言い切れないのですが・・・。 シノボリ属ではゴクラクハゼを除くと最大のヨシノボリのひとつと言える魚で、河川では10cm を越える個体もいるようですが、家庭用の水槽で飼育した限りではそれほど大きくは成長せず、7〜8cm ほどにしかなりません。 殖期のオスはかつてヨシノボリ(黒色大型)と呼ばれたように体が真っ黒になり、体の模様も不明瞭になります。 いという特徴から混同しやすいのか、本種のオスをクロヨシノボリとして紹介しているのを見かけたことがありますが、ひれの斑点の有無などから判別は可能です。 卵したメスの腹部は特に色を呈することはなく、白色を帯びる程度のようです。 

 

分布状況

 北地方から九州にかけての日本に分布します。 較的大きな河川の上流やその小さな支流、河口付近まで中流域的な環境のある川では中流域にも生息しており、大都市の平野部に河口を持つ河川には生息しないようです。 まり大きな川でなくても水量が豊富な河川ではルリヨシノボリと一緒に見られたり、カワヨシノボリの生息環境のすぐそばで見られることもありますが、それ以外では生息環境を競い合う魚はあまりいないので、いる場所にはまとまった数の個体が見られます。 

 

生活

量の豊富な河川の上・中流域の流速の早いエリアに見られ、流れの緩やかな大きな淵を避けるように、淵頭や早瀬の深みなどに生息しています。 ワヨシノボリやシマヨシノボリと同所的に生息する場合がありますが、カワヨシノボリは淵の流れの淀んだ場所に、シマヨシノボリは比較的平瀬よりに生息する傾向があり、淵頭を好む本種とは住み分けている様子が見られます。 サを捕らえるのに都合のいい場所などをめぐって小競り合いを繰り返して生活しているので、エサが多く流れてくるような流れの速い場所や見晴らしのいい石の上などを大型のオスが占有する傾向があります。 温の高い季節には特にメスがよく移動しながらエサを探すようになり、オスが石の下に入ったときなどに良い場所に移動してはオスに追い払われる、という様子が見られます。 

 

飼育 

 トップの写真の個体と同一の個体ですが、気分や体調で体色の濃さを変化させるので、雰囲気も違って見えることがあります。 淡い体色のときには、体のウロコに青くきれいに輝く斑点が並んで見え、尾びれや第2背びれには縞模様が現われます。 これらは成熟したオスでは体が黒くなるのと同時に目立たなくなる特徴です。 尾びれ基底のオオヨシ斑も小さく、三日月のような形になっています。

 槽での飼育は特に困難な点はなく、上流域の魚であることを特別に意識して飼育する必要はありませんが、調子を良く保ち、本来の環境を再現するには低水温で酸素の豊富な環境を用意してあげた方がいいでしょう。 かし、本来は両側回遊魚なので幼魚期には下流域も通過するため、酸素濃度はともかく、水温に対する耐性は他の冷水魚よりも優れています。 際には水槽の水温上昇と同時に酸素濃度の低下が併発しやすいので、酸素を多めにしておくに越したことはありません。 た、水流のある環境を好むため、上部ろ過などで水流を作ってあげた方が調子はいいようです。 シノボリとしては闘争心が強く、接近してくるヨシノボリ類を執拗に追い払う様子が見られます。 たがって、ある程度の数を飼育する場合や、他のヨシノボリ類と一緒に飼う場合には、目隠しを多く配置するなどして闘争の頻度を減らす工夫が必要です。 温などの環境にもよるのだと思いますが、調子がよいと石の下に隠れることをほとんどせず、どちらかというとボウズハゼ類のように見晴らしの良い大きな石の上にいるのを好むようです。 れは礫底のすき間に生息するカワヨシノボリなどとは対照的で、姿が観察しやすいという点では、隠れがちな種類のヨシノボリに比べると飼育していて楽しい魚かもしれません。 サは動物食寄りの雑食性で、冷凍の赤虫を上部ろ過から流すと勢い良く食いつく様子が観察できます。 リヨシノボリに比べると食が太いようで、エサを与え続けるとお腹が大きく膨れるまで食べてしまいますが、あまり食べない魚よりは安心して飼育できる魚かもしれません。

 

● 追記

 種の成魚の生息する上流域は河口からかなり離れているところもあり、ひとつの河川で見た場合に生息密度もそれほど高いわけではないので、両側回遊魚である本種にとって生息域よりも下流の環境変化は脅威になります。 際、飼育してみると水質にうるさい様子も特に見られないので、本種の生存にとって脅威なのは成魚が生息する上流域よりも、体力のない稚魚が通らなければならない下流域の環境変化なのではないかと思います。 流域に良好な環境が残されていても都市部に流れ込む河川にはあまり見られないのも、下流の都市開発によって生息できない環境になったからではないかと推測されます。種は、開発による環境変化の影響が開発する場所にいる生き物だけの問題ではないということを教えてくれる貴重な魚ですし、下流域の環境変化などの影響が本種のような上流の魚にも及ぶということは忘れてはいけません。 

 

 

★★★ もっと オオヨシノボリ! ★★★

 番優位な個体が上流側の見晴らしのいい場所を占有し、流れてくるエサを待つ様子が水槽でも観察できます。 い体のオスはクロヨシノボリと混同されることがありますが、体の中心に沿って1本の暗色縦帯がないことや、生息環境の違いなどから判別ができます。 
 

 ちらは抱卵し始めたメス。 腹は白色で、シマヨシノボリやトウヨシノボリのような青色も、クロヨシノボリのような黄色も一切見られないことから、メスはこの点でも他種との判別が可能かもしれません。 びれの基底の上部には輝青色の斑点も見えます。

 

 れは陸封されていると思われる環境に住んでいた幼魚。 びれのオオヨシ斑はとても小さく、尾びれ基底のオオヨシ斑は湾曲する上に上下2つに分かれたように見えます。 びれにこの程度の小黒点が見られるヨシノボリはほかにもいるため、にわかには本種と断言し難い個体。

 

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