エソハゼ属の一種
Schismatogobius ???
店頭で タイガーゴビーの名前で売られていたもので、おそらくはインドネシアから入国したものではないかと思います。 エソハゼ属(Schismatogobius)の魚なのは間違いなさそうですが、日本のエソハゼ類とはまた別種なのかもしれません。 エソハゼ属の魚は、国内のフィールドではあまり見られない魚ですが、まとまった数の入荷があったようなので、海外にはこの仲間もたくさんいる川があるのかもしれません。
外見の特徴
形態的には側偏した体形と、前に突き出た下あご、尾びれの上下に1つずつある白色の斑点などが特徴です。 側偏する体型を除いて、真横から見ると、体色も斑紋も胸びれの条が太いことなどもカジカに似た印象を放つ魚です。
体型は左右にやや平たく、前後に細長い形をしていて、背びれや尾びれはわりと小ぶりです。 エソハゼの仲間は中流域の砂礫底などを好むことが知られていて、ひれが小さいのは流れのあるところを好むハゼにはよく見られる特徴ですが、体が上下でなく左右に平たいのは珍しいのではないかと思います。 おそらく、石の上に定位するよりも、石の側面や窪みなどに体を寄せたり、すばやく砂礫の中に潜ったりするのに適しているのではないでしょうか。 小型のハゼで、大きくなっても4cm位なのではないかと思います。 下あごが前に出ていていわゆる受け口になっており、口はかなり後方まで裂けています。 体のわりにとても大きく口をあけることができるので、いかにも動物食という印象を受けます。 ただ、あごの大きさには雌雄差があるそうなので(決定版 日本のハゼ より)、この特徴は雌雄どちらかにだけ見られるものなのかもしれません。 体色は全体的に白っぽく、石灰質を多く含む砂利やサンゴ砂のような色をしています。 体には千鳥格子のような形を成す黒色の横帯が数本あり、尾びれの基底付近と、目の下のあごの側面あたりにも、この横帯と同様に黒い色が現れます。 対照的に鼻先やあごの先端、胸びれの基底部、尾びれの上下端には白く目立つ色が現れます。 これらの体色の特徴は、砂礫底では保護色としてとても有効で、生態的にもよく砂に半身ほど潜る行動が見られます。 体調にもよるのでしょうけど、第1背びれの端部は黄橙色に、その下が水色に染まることがあったり、第1背びれと第2背びれの中間付近の背中側に橙色の斑点が現れたりします。
分布状況
本種の詳細な分布は不明ですが、海外にはエソハゼ属の魚が本種のほかにもいろいろいるようです。 黒潮の下流側に位置する日本は本属の分布の北限にあたるので、日本での本属の魚の生息数はあまり多くありませんが、海外一般にはどのような密度で分布しているのかも興味があります。
生活
口はかなり深く裂けていて、コイ科のハスのように独特の噛み合せをもつ形をしています。 動物食に適応した形なのか、または巣穴を掘るために石を運ぶのに特化した形なのではないかと思います。
泳ぐことが下手な魚で、石の上にいるよりも、石に身を寄せたり、砂に半身ほど潜ったりしていることの方が多いようです。 泳ぐときには体を小刻みにくねらせて素早く移動しましが、移動先でまたすぐにじっとしてしまいます。 泳いでいるときには尾びれの小さな白い斑点がよく目立ちます。 同種間では多少闘争が見られますが、視界に入っていてもわざわざ闘争を仕掛けに行くようなことはなく、おとなしい性格をしています。 じっとしているときは気配を消すことができ、他のハゼ類がそばに来てもこの魚の存在には気付かないようです。 本種自身もこの才能を存分に活かして生活しており、うまく体の背面だけが出るように砂に隠れたり、時には顔だけ出していたりもします。 口のつくりから想像するに、動物食の傾向が強いのではないかと思われます。
飼育
水槽では砂利を入れてあげると潜ることができるので落ち着くようで、体に対して比較的荒い砂利でも潜ることができるようです。 水流も多少はあった方がよいでしょう。 潜らずにただじっとしていることも多く、体調の良し悪しがわかりづらいところでもあるのですが、潜らなくても体の模様が保護色になることを知っていて、本種が小さいので、本種を食べてしまうような魚との混泳は避けた方がよく、ドジョウ類のように砂を掘り起こしてしまう魚とは相性があまりよくないかもしれませんが、それ以外では特に相性の悪い魚はいないのではないでしょうか。 本種も他のハゼを意識せずにマイペースに生きているように見えますし、他のハゼも本種を意識している様子を見たことがありません。 もしかしたら、保護色で本当に見えていないのかもしれません。 エサとしては冷凍の赤虫を与えると好んで食べており、体に対して結構大きなエサも食いついて飲み込んでしまう、ハンターとしての一面ももっている魚です。
★★★ もっと エソハゼ属の一種 ! ★★★
体を半分ほど砂利に沈めて、隠れている様子。保護色を活用している様子がわかるでしょうか。 さらに、シマドジョウのように顔だけを出して潜っているととても見つけづらく、フィールドでも実は結構見逃しているのかもしれないです。
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たまには石の上に乗ることもありますが、これではとても目立ってしまいますね・・・。 こうして見ると体の模様はなかなか可愛らしいです。
特に隠れているつもりはないのかもしれないですが、そばにやってきたリップスティックゴビーの目には完全に見えていないかのよう。 普通に蹴飛ばされます・・・。 なお、この個体はあごが小さくかわいい顔をしていて、ヒナハゼで言うならメスっぽいということになるのでしょうか。 二つの背びれの中間付近に橙色の模様があるのがちょっとしたアクセント??
どこに本種が写っているかわかりますか? ちなみにこの写真には2匹写っていて、1匹目は左下、一番手前にピンボケで顔だけ写っています。 さて、もう1匹は・・・砂利底の一番奥、石の陰からこちらを向いている顔が見えるでしょうか。
こちらはあくびをした瞬間の衝撃映像。 この顔は獰猛なハンターの顔ですね。 体の断面より大きく口を開けていますが、どのくらいの大きさのものまで食べようとするのか・・・。あるいは、小さい体で自分より大きな石を運ぶためのものなのかもしれませんね。
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