ウシヨシノボリの産卵
(Jan. 2005)
前の年の12月上旬に濃尾リベンジを果たし、ついにウシヨシノボリに遭遇できた私。 この魚が希少種であるかどうかは各生息箇所ごとに考える必要があるわけですが、問題がないと思われる箇所から数匹うちに連れて帰りました。 ウシヨシノボリの生態観察がスタート、ほかのどのヨシノボリに似ているのだろう、という思いで見つめ始めたものの、その実態はかなり個性的なものでした。 そして飼育開始から1ヶ月の間に見る見る体色に雌雄差が現れ、早くも産卵に至りました。
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これは大きな石の下に巣穴を作り、求愛行動を始めたオス。
体は暗い褐色になり、第1背びれの端部は橙色を帯びた黄色、第2背びれの後方から尾びれの端部にかけて黄色から青緑のような何ともいえない色、尻びれの端部は水色でなかなかきれいな姿です。(図鑑ページ参照。)
しかも中層を浮遊するときには少し大きく伸びた胸びれや背びれを優雅に動かします。 特に、求愛行動を始めると目の下と目の前方、上唇に淡色に光る模様が現れ、下唇も一層黄白色に輝きます。
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時を同じくしてメスは抱卵し、成熟する頃にはお腹が大変大きく膨らみます。 他のヨシノボリでもメスのお腹が大きく膨らむ種類はいますが、体が短くて尾の付け根が細いウシヨシノボリでは膨らんだお腹が強調されて見えます。 成熟したメスのお腹は乳白色に輝きます。 |
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オスは巣穴を作り始め、大きめの石もくわえて運び出していきます。 口に入らない石は、尾びれで勢いよく払うなどしてどかしていきます。 |
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巣穴を作りながら、ときどき上下逆さまになって体をくねらせたりします。 なんらかの掃除をしているのか、産卵時間が短いことも考えるとあるいは前もって精子を天井面につけているのかもしれません。 |
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ヨシノボリの産卵行動においては、雌雄の積極性が種類によって異なることが知られています。 何種類かのヨシノボリを飼育してみると求愛行動に明確な違いがあることが実際に観察できます。 地域変異のある種類ではその行動にも地域差があることが予想され、それは私がいろんなヨシノボリを水槽で観察することで一番興味を惹かれる部分でもあります。 で、本種の場合はと言うと、どちらかと言えばオスが積極的にメスを誘うようです。 しかし、メスは自分が十分に成熟してもオスから誘われない場合(悲・・・)、オスの視界にわざと近づいていって、膨らんだお腹を見せ付ける行動が見られました。 写真はインドネシア産のアカボウズハゼ属のオスにお腹を誇示するウシヨシノボリのメス。 これほどまでの「産みたい光線」を見せられると何とかしてあげたくなります・・・。 |
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オスが巣穴を完成させて求愛行動を始めるタイミングとメスが十分に成熟する時期は見事に一致しています。 詳しい知識はないのですが、なんとなくオスの方が成熟サイクルが早い印象があるのですが、本種ではぴったり合っているように見えました。 自然下では産後何日たっている相手と遭遇するかはまちまちだと思いますが、水槽で1ペア飼育をしているとその見事な一致に驚かされます(産後19〜20日)。 その結果、オスの求愛が激しくなるとすぐにメスは求愛を受け入れ、水槽ではほぼ無駄な時間がなく産卵が繰り返されます。 写真は、中層を優雅に泳いでメスを巣穴に誘導するオス。 |
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そして巣穴に到着です。
オスはここでちょっと特徴的な求愛を見せてくれました。
ここまで来たら巣穴にそのまま入ってしまうものと思ったら、オスが急にメスの正面に向き直り、なんとメスのまわりを一周してダンス!
その後に2匹とも巣穴に入っていきました。
このダンスはメスを連れてくる途中で見られることもあります。
(GIF アニメーションにしてみたのですが、うまく見られないようなことがあれば、掲示板かメールでお知らせ頂けると嬉しいです。) |
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巣穴に入ると、さっそくメスは上下逆さまになり、卵を産み始めます。 オスはたまにしか逆さまにならないので、やはり精子は先についているのかもしれません。 |
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メスのお腹からは産卵管のようなものが出て、天井面をなぞるように卵が産みつけれられていきます。 卵は球形に近い形をしています。 |
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私がこれまでに産卵を観察したヨシノボリは産卵を一晩かけて行い、翌朝に産後のメスが出てくるというものばかりだったように思うのですが(たまたまかもしれません)、本種は昼間でも産卵を始めて、短時間(1〜2時間くらい?)でメスは出てくるようです。 産卵が終わるとオスはメスを激しく追い払い、卵の保護を始めます。 写真は産卵から1日もたっていないころの様子ですが、産卵時と比べてすでに卵は発生を始めて細長くなっているのがわかります。。 |
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オスは胸びれや背びれで卵に新鮮な水を送ったり、卵のホコリ(雑菌?)をはらうような仕草をしたりします。 背びれで思いっきり卵をなでているのがわかるでしょうか。 けっこう勢いよくひれを動かしているのですが、卵はしっかりと産みつけられているようで、石の面から外れてしまうことはありません。 |
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清流にすむ種類のヨシノボリでは、オスが巣穴にこもって孵化までほとんど出てこないものが多いのですが、本種は巣穴の外、それもけっこう離れたところまで偵察に出たり、普通に食事をしたりします。 こういった行動からも自然下での産卵の様子を憶測することができると思うのですが、実際に見てきた生息環境も考えると、本種の場合は石の下だけでなく、例えばコンクリート面や沈下物などのもっと多様な環境を産卵に利用しているのではないかな、と思いました。 そういった環境ではもともと密室型の産卵室を作ることが困難なので、外にも普通に出るような習性があるのかもしれません。 |
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産後2日頃の様子。 上の写真と比べると卵の形が細くなり、目ができてきたのがわかります。 |
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産後5日ほどになると、オスはこれまでと同様に卵の世話をするほか、顔を卵に近づけて子供の様子をよく見るようになります。 体の大きさという点でも、お父さんは実に偉大であります。 |
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子供の面倒を見るオスの表情はなんとも愛情にあふれています。 |
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産後1週間。 オスが水を送るのを休んでいる一瞬などに卵をよーく見ると、卵の中の目がピクッと動いたりします。 もう孵化も間近です。 |
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あっ! 生まれた! |
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稚魚はボウズハゼ類に比べると大きいものの、やはり非常に小さいです。 短期間で興味深い行動を見せてくれたウシヨシくんたちに感謝であります。 ヨシノボリの中でも容姿、行動ともに愛らしく、とても癒されるヨシノボリだな〜と思いました。 (ウシヨシノボリの産卵 おわり) |
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産卵、その後に考えたこと・・・。
本種は淡水で育てることが可能と思われる種類なので、なんとかすれば大人まで育てることも不可能ではないかもしれません。 ただ、水槽で飼育するスペースや、飼育者の自己責任等も考慮して悩んだ結果、今回は特に稚魚を隔離しないことにしました・・・。 まあ、そう簡単にたくさんの個体が育つとも考えられないのですが、大卵型で少数産卵の中国産ヨシノボリでもやんちゃで立派な大人が5匹ほど育ったことを考えると、うーーーん、と考えてしまいます。
魚を飼育することのいわゆるブームは情報ばかりが先走り、飼育者の知識やモラルが伴わない形で広がっているのが現状です。 これは、本人は自然を愛しているつもりでも結果として自然に危害を加えている場合もあり、非常に危険なことだと思います。 飼育魚や繁殖させた魚が川に放たれては取り返しがつかなくなるので、生きている魚を他の方々へ譲ることは本当に信頼できる方以外には避けなければならず、ショップに引き取ってもらったりするのは絶対にしてはいけないと私は思います。 ならば、増えた魚も自分で飼育、増えても飼えなくなったらそれは飼育者の責任であり、処分もしなくてはいけないものでしょう。 人の手が少しでも関与した自然はもはやその前の姿には戻せないので、飼育という行為を楽しませてもらうにはいろんな自己責任が伴うものだな、と思いました。