サイパン産ナンヨウボウズハゼ属の産卵
(Dec. 2004)
春にうちにやってきたサイパン産ボウズハゼたち、秋の産卵期になるとメスのお腹がどんどん膨らんできました。 しかし、どういうわけかオスはなかなかきれいな色になりませんでした。 これには何か理由があろうと思って現地で観察した様子を思い出してみました。 ものすごい密度で生活している彼らですが、色の強く出た個体は深い淵で個々に縄張りを形成しており、成熟したオスは密集エリアを離れて生活していることになります。 つまり、未成熟の密集個体群の中から成熟したメスが抜け出して、オスの縄張りエリアに出向いて産卵することが予想されるわけです。 ならば、問題はオスが十分に成熟しないことなので、オスの密度を下げてみようかな、と思いました。 そこで、少し前にヨロイボウズハゼが産卵に至ったことにいい気になって、それを参考に産卵用に小さな水槽を用意することにしました。 これが当たりだったようで、水槽を用意してから1ヶ月ほどでどんどんオスの色がきれいになりました。 これで雌雄ともに準備が整ったと思われるので、産卵に至るのを待ってしばらく観察を続けることにしました。
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小型ボウズハゼのオスは何かしら美しい色彩を見せてくれるものが多いですが、求愛行動時には通常のきれいな色から瞬時にして一層際立った色になることがわかってきました。 本種も普段から背びれに赤や青の色が出てきれいなのですが、産卵用の水槽を用意すると姿を一変させ、黒を基調とした強烈な色になりました。 ボウズハゼ類の求愛時の姿は野外でもチラッとは見ることができますが、すぐにこちらに気づいて警戒するので観察は難しいものです。 試行錯誤して水槽のレイアウトを考えた結果、産卵に至ったときには、少しはいい環境を用意してあげられたかな、という達成感に浸ってしまいます。 |
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こちらは密集環境で成熟したメスです。 鼻先が白く光って、普段特徴的な体の縞模様は淡くなっています。 小型ボウズハゼ一般に言えることですが、膨らんだお腹は銀白色に輝きます。 |
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成熟したオスは同属の多種にもその姿を誇示して縄張りを形成します。 このナンヨウボウズハゼのオス(右)もMAXの体色で縄張りを持っているのですが、体格差もあってか、本種のオス(左)にはかなわないようです。 集団生活型の本種の闘争本能はあまり強くなく、幸いなことにあまりしつこく追い回すことはありません。 これは水槽の数が増やせない状況になっているうちでも産卵が観察できる大きな要因でもあります。 |
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密集水槽で成熟したメスは、オスから求愛されないとわざとオスの前でお腹を見せたり、オスを追いかけて泳いだりします。 多種のオスや、なんとカージナルテトラを追いかけたり(メタリックブルーの色に恋している??)するので、配偶者選択のことなどを考えると本来はオスが本種のメスを判別して求愛することで産卵が始まるものと思われます。 写真は、集団生活なので産卵意識が無いオスをしつこく追いかけていく、婚姻色の出たメス。 ときどき横に並んでお腹を見せたり、オスのお腹をつついたり。 最終手段は、正面に回りこんでなんとキスアタック?! |
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こちらは産卵用水槽で縄張りと求愛の意識が出てきたオス2匹とメス。 オス2匹が同時に求愛し始めていますが、まだオスの優劣順位や縄張りがはっきりしていないので、決着はつかず。 |
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最終的には最強のオスがはっきりとしてきて、漆黒の体と真っ青に輝く顔をメスに盛んに誇示するようになります。 これは同属の多種でも見られる行動で、10cmほど距離を保ち、ひれをいっぱいに広げて求愛します。 写真では写っていませんが、メスは右下の少し離れた位置にいます。 |
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求愛がメスに受け入れられ、ペアが成立するとオスの体色は控えめになり、オスは巣穴にメスを誘導することに専念し始めます。 美しい体色は結婚前に見せるためのもので、結婚したら気を抜いてしまうとは・・・。 それはともかく、ペアが成立するとオスの動きにメスが寄り添うようについていきます。 中層で一瞬メスがオスの体の上に乗って泳いだりするのは海水魚のようです。 そしてオスから先に頭から勢いよく巣穴に入っていきます。 |
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翌朝、すっかりやせてしまったメスを発見し、オスの姿も無かったので、これは間違いないと思い、巣穴を覗かせてもらいました。 すると・・・やはり産卵していました! あまり産卵を観察できない魚が普段とは違う表情で卵の世話をしている様子はちょっと感動です。 |
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卵の大きさは0.4mmほどで、ヨロイボウズハゼの卵よりは少し大きいな、と感じられるサイズでした。 |
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産後2日ほどすると、卵に目ができ始めます。 幸い白いものに産んでくれたので目ができたのがわかりやすいです。 |
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卵を守るオスは産卵後からずっと水を送ったりして食事もせずに世話を続け、孵化するまで巣穴の外に出ることはありません。 |
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そして、3日〜4日で孵化が始まります。 オスはまだ泳ぎださない子供の様子を心配そうに見たりします。 小さい魚なのに、感心してしまいますね。 ひとつひとつ理にかなった行動が本能として彼らの遺伝子の中に受け継がれているというのはすごいことだと思います。 こういう感動的な光景が自然の中ではとてもたくさん繰り返されているわけで、自然というのは新たな感動を求め続けても尽きることなく感動を与えてくれるものなのだろうなーと思いました。 (おわり) |
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