リップスティックゴビーの産卵

(Feb. 2005)

 の魚は2004年の半ば頃にインドネシアから日本に多く持ち込まれた数種類のボウズハゼ類の中の一種で、アカボウズハゼ属ではないかと思われる魚です。 ちではアカボウズハゼ属の魚はアカボウズハゼしか飼育したことがなく、それも産卵には至っていないものの、本種は流れを好む様子が伺えたので以前から産卵に成功しているヨロイボウズハゼの飼育環境を参考に飼育しておりました。んな中、2005年の2月に入ってからオスの巣作りと求愛と思われる行動が見られ始め、輸入に至る過程のせいかなかなか太らないメスにも抱卵と思われるお腹の膨らみが微妙に見られるようになりました。 してある日、ヨロイボウズハゼに比べるとメスが全然太っていなかったので油断していたのですが、そのメスがやせて現われました。 れは・・・ということで気がついたときには孵化間近でありました。 の魚のオスとメスは別々に連れて帰ったものなので同種なのかどうかも疑問に思っていたのですが、同種と言ってもよさそうだと判明したことも収穫です。 まりしっかり見たわけではないのですが、プチ産卵レポートであります。

   

 愛行動中のオスは体の朱色が際立って、体の前半部が黒ずんできます。 ちに来た当初からある程度このような色が出ることはあったので、正直言うと求愛時にはもっと極端な色になるのかと期待してしまっていたのですが・・・。 もこの朱色の眩しさはなかなか強烈に目立ちますね。

 

 

 まり太らないメスに油断してしまっていたのですが、これが成熟したメス。 た、オスの求愛を受けても応じない場合は普段と体色が変わらず逃げてしまいますが、応じる意思があるとこのように縞模様が体に現われると同時にお腹の微妙な膨らみが銀白色に目立つようになり、オスの求愛の様子をじっと動かずに見るようになります。 
 

 段の行動からして、ヨロイボウズハゼ以上にかなり機敏で警戒心が強い本種。 画像のブレ具合からもわかるとおり、求愛行動も機敏そのものです。 スはメスの前で一瞬止まって朱色の体を見せますが、特にひれを見せたり、ダンスをしたりはしません。 アイコンタクトで勝負しているのかも?? してすぐに巣穴に泳いでいってメスを待つ、ということを繰り返します。 の間、メスは画像のとおり全くと言っていいほど動かずにそれを見ています。(アニメgif、どれも約200Kb)
 

 

 

 

 

 

 の画像と同じときの一連の動きの続きです。 じような行動を繰り返します。 動としてこれほどシンプルな求愛も珍しいと思うのですが、異常に機敏なオスと全く動かないメスはとても対照的です。段は追い払われてしまうメスですが、このときばかりは相手を認めるまでは思わせぶりな態度も一切なしということで、凛とした姿はかっこよさすら感じます。

 

 

 

 

 

 だオスを認めないメスは、じっとしたままです。 スは巣穴に先に入るルートを微妙に変えたりして、誘う求愛を繰り返します。 ニメーションの速さを速くしてありますが、オスの求愛の機敏さはこれがもっとも肉眼で見た感覚に近いです。 

 

 

 

 

 

 スの巣穴は完成しているようですが、邪魔に思った石は求愛中にも運び出します。 して、今度は帰り際にほんの一瞬中層で止まって視線を送って見せました。 れらの求愛画像をとおしてメスが一歩も動いていないのも驚きです。

 

 

 

 

 

 

 してオスの求愛を十分に見届けた後、メスは先に巣穴に入ったオスの後から巣穴に入っていきます。 般的なハゼの求愛行動のようにオスにぴったりついていくのではなく、オスは巣穴に先に入って待ち、メスは気が乗ったら後から自分で巣穴に入る、という感じでした。 スはポーカーフェイスでありながらオスの巣穴の場所などもちゃんと見ているんですね。 

   
 

 さて、気がついたら産んでいたという状況だったので、見たときにはおそらく産後3日目ぐらいだったようです。 の様子は他のボウズハゼ類とほぼ変わらず、卵の大きさはヨロイボウズハゼより微妙に大きめ、ナンヨウボウズハゼ属の魚と同じくらいに思いました。 知のハゼ類の産卵を見るときには、この魚がもし大卵型で稚魚の淡水飼育ができたらなぁ・・・なんて毎度思うのですが、ボウズハゼ類というのはみんな極小卵なのかもしれませんね。

 

 はすでに目がはっきりと見えていて、孵化が近そうでした。
 

 を保護している間もオスの警戒心は極めて強く、卵を拝見したら一目散にどこかへ逃げてしまいました。 のボウズハゼ類では巣穴を覗かせてもらってもそう簡単にはその場を離れないのですが、万が一離れても戻ってくる様子が見られたので、この子もまた戻ってくるだろうと思って卵の観察を続けてしまいました。 、観察を終えて巣穴を戻すと、やはりどこからかオスが戻ってきました。 写真は、戻ってきたらお父さんの顔も撮らせてくれるかな、と思ってガラス越しに多少見えるようにしてみた様子。 写真中央、白い器にぼんやり見えるのが一面に産み付けられた卵で、左が戻ってきたオスです。 

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産卵、その後・・・。

 この後、ヨロイボウズハゼなどと同様に大量の稚魚が孵化、しかしどうにも救ってあげることはできなかったのでした。 応、毎度違う試みを自分なりにやってみて1匹でも生存させられないものかとは思っているのですが・・・。 

 だ、やっぱりこのように卵をたくさん産む様子と、この魚が生息地において高密度で多数生息しているものでないと思われることを考えると、こういう魚はほんとに業者に捕らせてはいけないな、と思うのです。 ンヨウボウズハゼ属の集団生活型の魚ようにたくさんいる魚と比べても、この仲間はたくさんの卵の中から生きる戦いを生き残ってきた少数の勇者たちです。 とつの命の重さは同じという考えで見たとしても、心無い採集を行ったときに真っ先に絶滅してしまうのはこういう魚なのです。

 種のようなの上流のハゼは人間の生活エリアと比較的離れたところに生息する魚ですが、一生のうちに海と川を行き来する魚です。 流の水質汚染や魚食外来魚の放流といった目に見えやすい破壊行為の影響は、そのそばにいない魚たちにも人知れず及んでいるということを多くの人が理解し、忘れずにいられるような社会と教育が確立することを望むばかりであります。

 

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