「山の郵便配達」

原題 「那山 那人 那狗」

瀟湘電影制片廠  北京電影制片廠  湖南省郵政局 共同制作

2001年9月7日(土) 岩波ホール



あらすじ

舞台は、1980年代初頭の中国湖南省西部の山間地。徒歩で2泊3日かかる山間部のコースを回る郵便配達員。若いときから数十年間ひたすら配達に従事してきた。そして今、この過酷な仕事を息子に譲り退職することになった。最後の仕事は、息子に仕事を託すため、愛犬「次男坊」と共に、親子で出発する。2泊3日単位の配達を繰り返す父親とは、24歳になる今までまともに接することのなかった息子。自分の親を「お父さん」と呼んだことすらなく、父と子の間には深い溝があった。

当初は、親子とも、何を話したらいいか分からず、ぎこちないものであった。そんな中、父は淡々と各村での仕事の段取りを教え、荷物の扱いかたなどの手順を施していく。 山奥に点在する村と村を結ぶ役割を担う配達員として駆け出そうとする息子。数十年勤め上げ退職しようとする父。息子は父を自分に投影させ、父も息子に自分を投影し若かったことの自分を回想していく。徐々に、長年空白だった親子関係を埋めるかのように話は展開し…



感想&見どころ


この作品を一言で表せば「素朴」に尽きる。派手なものは一切ない。花鳥風月的な日本人のイメージするような中国の山々、その中で展開される生身の人間の物語である。よって見どころは、豊かな温暖湿潤な緑と田園とも言える。

そして、この映画で重要な役割を演じるのは「次男坊」こと父と長年仕事を共にした愛犬だ。次男坊なくしてこの映画は語れない名脇役だ。ちょっと不思議だったのは、中国で犬と言えば「食」と連鎖反応的に思考してしまうだがf^^;;;、この映画では「勿論」そのようなものではなく、人間としての愛すべきパートナーとして登場する。しかもシェパード。(中国でシェパードなんて一度もみたことないな^^)

この映画の良いところは、派手さや凝った映像で迫っていくのではなく、ただ淡々と豊かな自然の中の要所要所に人間ドラマを散りばめているところだ。だから、最後のところで急転直下的に結末を迎えるというところでもなく、少し含みを残している。その場面でも次男坊は大活躍だった。

映画の中で、私自身、見たことある民家や風景が出てきた。「風雨橋」が出てきた時、「絶対、広西のトン族自治県だ!」と確信した。物語でも実際「トン族」という言葉が頻発して出てきた。息子といい感じの仲になった娘もトン族だった。 しかし、映画の最後で出演者や協力者のなかでロケ地を確認したが、湖南省となっていた。 湖南省。毛沢東を始めとする中国近現代史で活躍する多くの政治家を輩出したところ。そんなイメージしか持っていなかった。 家に帰っていろいろ調べてみると知らないことが多かった。

トン族 

人口 
251万4000人、

居住地 
      貴州省         黔東南ミャオ族トン族自治州  玉屏トン族自治県、 
      湖南省         通道トン族自治県  新晃トン族自治県
      広西チワン自治区  三江トン族自治県

言葉   古代タイ語がチワン語分化する前に枝分かれして出来た
      シナ・トベット語族トン・タイ諸語グループに属する  
∴ タイ系民族とみられる 
       

少数民族は省など関係なく住んでるので、貴州、広西、湖南のの二省一自治区にまたがって住んでいる。 確かに、以前三江トン族自治の三江に行ったとき、テレビで貴州の放送していて、もう貴州に近いと実感したことがあった。この映画のお陰で、広西の上(北)には、貴州だけでなく湖南もあった!と知ることができた。

この映画の時代設定は1980年代初頭ということだから、まさか現在もこんな徒歩で配達してるところはないだろうと思っていたが、監督の話によるとまだそういう地域もあるというので驚いた。 私は、岩波ホール@神保町の最終日に見たが、これからも新宿シネマ・カリテ 9月22日〜、銀座シネパトス 9月22日より上映されるとのこと。 ワンパターンのアメリカ映画に飽き飽きしてる方、癒されたい(←最近陳腐化してるけど)方、中国の諸民族に興味のある方、中国の綺麗な景色を堪能してみてはどうでしょう?

 

2001年9月8日記


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