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◎11月24日(日) (12日目)
 ブラ・レジア→ドゥッガ→チュニス泊

●真っ赤な朝焼け
 6:45、部屋のカーテンを開いた妻が「見て、見て」と素っ頓狂な声を上げました。目の前が真っ赤に染まっています。地をうねる運河も赤く、まるで燎原の炎を思わせる光景です。
 これほどの朝焼けをかつて見たことがありません。夢中でシャッターを押しましたが、かなり手ぶれしているに違いありません。それほどの興奮ぶりでした。

●10分間のショー

 色彩の妙を演出してくれた朝焼けは10分ほどで終わりました。カーテンを開けるタイミングがもう少し遅かったら感激のシーンは見られずしまい。この光景を同行の何人が目にしたでしょうか。
 今日は2つの遺跡を見学します。7:05、その一つ、ブラ・レジアへ発車。西に進路をとってアルジェリアの国境近くまでひたすら走る約3時間のドライブです。すぐに塩湖が見え、軍事病院、軍事基地などが続きました。

●ナンバープレート
 道中は長い。車窓風景を楽しむことにします。気になっている一つに車のナンバープレートがあります。チュニジアには3種あるようです。ガイドに尋ねたところ、黒地に白色の文字は一般車、白地に赤字は公用車、青地に白い文字はレンタカーということでした。
 疾走を続ける道路は延長300kmでモロッコまで続いています。要所、要所にお巡りさんが立ち、婦人警官の姿も。バスがスピードを緩めると、にっこり笑って手を振ってくれます。

●盛ん農作物栽培

 バスが西進する北部は雨が多く、農作物の栽培が盛んです。ザクロやオレンジ、オリーブ、ジャガイモなどの収穫期を迎えて、あちこちで採り入れの風景が車窓に流れます。
 1時間あまり走って、ベジャの町で休憩。コウノトリと小麦のモニュメントが建っていました。周辺地域はコウノトリの飛来地。あちこちに巣があって、ヨーロッパ各地から越冬のために飛来します。優雅な姿が見られるのももうじきです。また、小麦の生産量も多く、芽吹いた麦畑が緑の絨毯のようです。

●イノシシ食さず

 サトウキビ畑と製糖工場が目に入りました。森の中の広大な農地に緑と茶色のパッチワーク模様が描かれ、その森には野生のイノシシがたくさん生息しているといるそうです。
 帰国後、丹波篠山で友人とイノシシ鍋を食べる約束をしているので、興味半分にチュニジアでもイノシシ鍋を食べるのか尋ねみました。「イノシシもブタと同じように爪が2つに割れているので、イスラム教徒は食べません」とガイドは言いました。 

●まずは博物館
 家族総出のジャガイモ掘りなどを物珍しそうに眺めているうちにブラ・レジアに到着しました。時計を見たら9:15。予定より1時間近くも早い到着。それだけぶっ飛ばしたということです。
 撮影料1Dを払って、まずは博物館で予習です。小さな博物館にはタニト神を彫った墓標、ヌミディア時代の女性の全身像、ローマ時代(4世紀)につくられたメドゥサのモザイクなどが展示されていました。

●ブラ・レジア

 ブラ・レジアは紀元前の4世紀ごろから2世紀までベルベル人のヌミディア王国の首都として栄え、8000人が住む都市でした。1世紀にローマの属国になって新たな都市建設が行われたのです。
 ローマが目をつけたのも肥沃な農地と盛んな農業。一時は農業と貿易で興隆し、人口も5万人を数えるほどに。しかし、繁栄は長続きせず、ビザンチン以降に没落しました。
 
●階段状に都市
 いまは丘の斜面を利用して階段状に造営した古代都市跡が残っているだけ。遺跡には浴場、劇場、神殿、野外劇場、キリスト教のバシリカ聖堂、洗礼堂や地下住居などがあります。

●共同浴場

 都市に足を踏み入れると、左手に貯水槽があり、さらに進むとカルタゴとタベルカを結んだローマ時代の道路が延びていました。
 右手に神殿か凱旋門かと見紛うアーチ。ユリア・メムニアの共同浴場と呼ばれているところ。ローマ時代の浴場です。男女別々の入り口があって、中には3種類の温度の浴室をはじめ、リラックスルーム、ジョギングルーム、体育館などが備えられています。

●贅沢な作り
 共同浴場は2世紀に造営されました。至れり尽くせりの施設のほか、大理石に覆われた壁、床にはモザイクも施され、当時としては贅沢なつくりでした。
 ちなみに、浴場名になったユリア・メムニアとはアフリカ属州出身のセプティミウス・セヴェルス皇帝の妻の名前と、いうことでした。

●宝物の館

 浴場から北に歩くと宝物の館。地下住居になっており、7世紀のビザンチン時代の金貨が大量に発見されて、名誉あるこの名が付けられました。階段を下りると、居間、寝室、台所の3つの部屋と廊下があり、床一面にモザイクが残っていました。
 周辺の草むらには真っ白な殻のカタツムリが無数にへばりつき、まむし草が鎌首をもたげたようににょきにょきと生えて不気味な雰囲気です。

●狩猟の館

 パジリカ、クジャクの館などを通り越して狩猟の館へと進みます。地下にはモザイクのある中庭、それを取り囲むように台所や3つの寝室、居間、トイレなどが並んでいました。
 注目は居間のモザイク。縦長のモザイクは四角い模様で仕切られたようになっています。このモザイクはテーブル代わりに使われたもの。四角い模様の上には1人前の料理が置かれました。つまりお膳代わりというわけです。
 入り口に主人が、その横に家族、上席に来客が座ったそうで、どんな料理が並び、どんな会話が交わされたのでしょうか。古人の生活に思いをはせるのもまた一興です。

●地下住居
 ブラ・レジアの特徴は地下住居。夏は酷暑、冬は寒冷という気象条件を克服するために考え出されたユニークな都市遺跡です。
 人々は夏は涼しい地下で暮らし、冬は日差しを求めて地上を住まいにしました。明かり採りの天窓を中心にした造りになっており、地下の壁には蜂の巣のような換気口まで設けられていました。

●1800年前の色彩

 娼婦の部屋、漁業の館、新狩猟の館を横目に見ながらアンフィトリテの館へ。狭い階段を下りて地下住居に入ると、その一室の床に極彩色のモザイクが描かれていました。
 タイやウナギ、イルカなどが泳ぐ海の上にアフロディーテとトリトン、その上には天使が活写され、美と愛の神・アフロディーテが海から生まれる様子を巧みに表現していました。
 ガイドが手にしていた水をかけると、1800年前の鮮やかな色彩が蘇って目を見張るばかり。2世紀の作品はきめが細かく、しかも最良の保存状態。ブラ・レジアでもっともすばらしいモザイクです。 

●野外劇場
 この後はフォーラム(広場)、アポロン神殿、野外劇場などを見学。地上部分はかなり崩壊していますが、パジリカにある洗礼用の窪み、神殿の柱などに当時の様子を伺うことは出来ました。
 野外劇場の正面に熊のモザイクがありました。なぜ、熊なの?。残念ながら聞き漏らしてしまいました。劇場の規模はやや小さめですが、観客席などはよく保存されています。また、音量を大きくするためにマイクのような装置も採り入れられていました。

●丘陵の都市

 広大な遺跡を駆け足観光して、次のドゥッガ遺跡へと向かいました。車窓には先ほどと同じようにジャガイモの収穫風景がスライドのように現れては消え、現れては消えを繰り返しています。ジャガイモは11月と4月が収穫期。タマネギは春は白、秋には赤玉の収穫になるそうです。
 バスは坂道を上って標高865mの峠を一気に越えました。ドゥッガは峠をやや下った標高600mの丘陵に拓けたローマの植民都市。バスを降りて小高い丘に上ると眼下にオリーブ畑が広がっていました。ブラ・レジアから南西に約70km走ったわけです。

●ドゥッガ
 ドゥッガはヌミディア王国の属国でしたが、紀元前46年にローマの植民都市となって450年間続きました。3世紀後半から4世紀初めに最も栄えて建造物が増え、1万人が住む大都市に発展しました。
 4世紀末にローマ帝国が東西に分裂して衰退、歴史の舞台から消滅しました。1899年に発掘調査が始まったとき、土に埋もれた遺跡の上にはアラブ人が生活していたそうです。
 チュニジアで最大、アフリカでも代表的なローマ遺跡として世界文化遺産に登録されています。   

●野外劇場

 見学は野外劇場からスタート。高台に建つ劇場は丘の斜面を利用してスタンドが設けられています。168年に建造され、その後何度かの増改築が行われました。
 観客席は改修されましたが、俳優が出入りする3カ所の入り口や舞台を飾る列柱などは当時のままです。
 
●波打つ農地
 観客席は下段から上段へと地位に応じて決められたようです。最下段は貴賓席で座席もややゆったり。下級の観客が座ったという最上の19段に上ってみました。
 そこは遺跡の全容ばかりでなく、波打つように広がるオリーブ畑などの農地を一望できるビューポイントでした。

●キャピトル

 劇場の前に延びるローマ時代の道路に馬車の轍(わだち)が残っていました。カルタゴを経てアルジェリアまで続いていた主要道です。遠くにはアレキサンドロスの凱旋門が望めました。
 緩やかな坂を下ると、10世紀に造られたモスクがあり、その手前にはマーキュリー神殿などが残っています。12星座を示したという円形の建造物を見て、遺跡のシンボルであるキャピトルに到着。劇場から道なりに進むのですが、けっこうな距離でした。 

●3神を祀る
 
 キャピトル神殿は公共広場(フォルム)の前に建っています。縦溝が彫られたコリント式の円柱6本(高さ8m)が玄関を支え、何やらギリシャ風のスタイルです。
 神殿には天空と地上の神であるジュピター(ユピテル神)、神々の女王であるジュノー(ユノー女神)、知恵と正義と平和の神であるミネルヴァ(アテナ神)の3神が祀られています。

●浮き彫り

 円柱に支えられた正面の破風(切り妻造りの三角)の下に人間とタカの浮き彫りがありました。ガイドは「鷹が人間を襲っている場面です」と説明しました。そのように見えなくもないのですが、まさか神殿にそのようなレリーフを施すわけがありません。これは疑問符です。
 中央の部屋にはかつてジュピター像があったそうですが、いまは見ることができません。また、かつては35本の円柱がフォルムを囲んでいました。それも崩壊し、片鱗を伺うことすら出来ませんでした。

●奴隷の市場?
 左右に続く住居跡。中庭にはモザイクが残っています。その先に奴隷市場だったという建物跡。その門からキャピトルを撮影した写真はよく目にします。どうやら誰もがねらうポイントのようです。
 敷石しか残っていない建物跡は、実際のところは何に使われていたのかはっきりしません。有力者の館説、薬草商の館説、あるいは医院だったのではという説など、などです。 

●共同浴場
 奴隷市場の左手にはリキニア浴場と呼ばれる冬の共同浴場があります。温浴室、冷浴室、熱浴室の3つの浴槽をはじめ、運動場や休憩所などが左右対称に並んでいました。地下には温水システムが備わっています。
 内部には頭部が欠けた彫刻やモザイク、円柱などが放置状態に展示され、近くにはキクロプスの浴場と呼ばれる夏用の浴場もありました。

●足早や観光
 広大な都市遺跡です。いくつもの神殿があり、いくつもの邸宅跡…。短時間の観光ですべてを見ることは不可能です。
 足早のガイドについてきょろきょろする目にとまったのはトリフォリウムの家と共同トイレでした。

●男性の天国!?
 トリフォリウムの家は公営の売春宿。中庭を囲む小部屋、客が順番待ちする部屋など、それらしい造りが残っています。
 小部屋の1つが四つ葉のクローバー(トリフォリウム)の形になっていたので、この名が付けられたといいます。中庭に真っ赤な花。何かを語っているようでした。

●12人用トイレ
 共同トイレは12人が一緒に用を足せる構造で、足下には汚物を水で流せるように樋が設けられていました。水洗トイレというわけです。
 男女共用で男の時間、女の時間が決められていました。雪隠(せっちん)のイメージからはほど遠い開放的な野外トイレ。お隣さんとはどんな会話を交わしたのでしょう。想像しただけで愉快になる共同トイレでした。

●オリーブ畑の塔 
 遺跡のはずれ、オリーブの木に囲まれるように石造りの塔がぽつんと建っています。ローマ以前のリビコ・プニック廟です。
 紀元前3世紀に建てられたもので、ヌミディア王国時代の指導者を祀っています。現存する塔は再建されたもの。塔を見学する時間はありません。、

●ベルベル人

 あちこちと回りました。しかし、慌ただしすぎて、またまた何が何だかよくわからないままに終了です。遺跡の中にベルベル人の粗末な家が建っています。先ほど山羊に草を食べさせていた女性もベルベル人でした。
 近くのレストランで昼食をすませてチュニスへ引き返しました。道ばたにパン売りの少年が立ち、野菜の直売所が並んでいます。バスはお巡りさんを見つけたら急ブレーキを踏むという緩急の繰り返しです。

●ガイドの作戦?

 15:40、ホテルに戻りました。「今日も早く着きましたね」。添乗員は時計を見直しました。駆け足観光に猛スピード運転。早くホテルに送り込んで日没と同時に食事をというドライバーとガイドの計算、と見たのはうがちすぎ?。ラマダン中の観光だから仕方がないのかもしれません。こちらも我慢、我慢。
 17:00、日没。短時間ながらきれいな茜色を見せてくれました。アザーンが響く中、ミナレットに明かりが灯りました。

●夜のメディナ
 夕食はメディナの中にあるレストランで。路地のレストランやバーは若い男たちでごった返しています。1日の断食が終わって、もっとも楽しい時間。どの顔も満足そう。チュニスのビッグベン(時計塔のモニュメント)もライトアップされました。   
 レストランは見事なアラベスク模様のタイルと透かし彫りで装飾され、ギター風楽器の演奏もあってアラビアン風の小粋な店です。チュニジアはイスラム教徒以外はアルコール自由の国ですが、この店ではラマダン中を理由に「お断り」でした。  

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