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◎9月27日(月)晴 (9日目)
 イシク・クル湖遊覧→チョルポン・アタ岩絵野外博物館→ナリン泊

●満たされて
 昨夜は泊まり客が少なくて静かでした。今朝も自前の朝食。満たされた気分で5階のテラスから日の出見物。しかし、南側の山並みはなかなか赤みを帯びてきません。北側の様子を見に出かけた妻が「こっちの山の方が日が当たるのが早い」というので大急ぎで場所を移動。

●山包む光彩
 すでに頂の雪が赤くなっていました。光彩はだんだん下へ、左右へと広がって山並み全体を包み、緑から黄色へと秋の装いをしたポプラも赤色に変色しました。光彩のカーテンはさらに麓の農地までも赤く染めて徐々に終幕へ。
 南のテラスに移ると、遙か彼方に横たわる山並みも赤くなりました。しかし、クインゲイ・アラ・トーのドラマチックな朝焼けを見た後では、雄大な風景にも感動はわいてきません。

●光る湖面
 その後、朝食前の散歩に出ました。風もなくて温かい朝です。林間の散策道を行くと、リスが走り回り、野鳥のさえずり聞こえます。風に誘われて舞う木の葉がカサカサと秋の旋律を奏でていました。
 湖畔に出ると、色づいた木々がブルーの湖面に写し込まれ、油絵の具を流したよう。山並みも光って見えます。感動ものの絶景です。

●特上の朝食
 ホテルへ戻っての朝食は「これ、何?」と思わせる特上サービス。スープ、クレープ、ピロシキ、野菜に肉類…。「何を血迷ったのかね」、「ブーイングが届いたのかね」、「シーズン中ならこれなんだよね」などとかしましい食卓。
 昨日の朝食を想定してお粥などをたっぷり食べた後なので、残念ながら大半は見るだけで終わりでした。
 
●サムライ・ビール
 9:00、スタート。ガイドから「キルギスではサムライというロシアのビールがよく飲まれます」と聞いて、ぜひ飲んでみたいとの声。町はずれのスーパーに立ち寄ると、話題のビールは確かにありました。瓶の上部に赤地の円があり、その中に漢字で「武」とデザインされています。ロシアにこんなビールがあるのは、プーチン大統領が武道愛好者なので、その辺りも影響しているのかも知れません。
 キルギスではウォッカもよく飲まれます。店の棚には様々な銘柄がずらり。近くで酩酊状態の男性を見かけました。アルコール依存症も多いそうです。

●湖上遊覧
 ここからイシククル湖の遊覧船が発着するチョルポン・アタまではすぐ。9:35には遊覧船が出航しました。乗客は自分たち一行だけ。ボートは波静かなブルーの湖面を滑るように進みます。
 陽光を浴びたクインゲイ・アラ・トーが鮮明な姿を見せれば、湖畔のポプラは所々に秋色を描いています。デッキにいても寒さを感じない絶好のクルーズ日和。

●国旗
 これまで滅多に目にしなかった国旗が、ボート乗り場の近くに翻っていました。赤地の中央に太陽とユルタをデザインしてあります。
 デザインは公募によって採用されたもので、中央の太陽には40本の放射光が輝いています。キルギスとはチュルク語で「40の民族」、「40人の草原の人」、あるいは「40人の少女」の意味。放射光は40の部族で構成された国であることを表しているのです。 また、太陽の中の交差する3本のラインは遊牧の民、キルギス族の移動式住居「ユルタ」の天井を抽象化したものだそうです。

●ドリンク2種
 話は横道にそれましたが、船上の一行は南北に横たわる山並みを眺め続けています。その傍らでアイスンさんが1人、黙々とドリンクのサービス準備。テーブルの上に並べたカップに注がれたのは2種類。
 コカコーラーに似た色の飲み物はロシアの「キワス」。透明の飲み物はキルギスの「ショロ」。キワスは甘ったるく、ショロは酸味がきついドリンク。「アイスンさん、ありがとう」と戻されるカップは、どれも半分ほどしか減っていませんでした。

●霞の彼方に
 その間にもボートはマリンブルーの湖面を滑っています。雪山が連なる南側のテルスケイ・アラ・トーがいくらか近くなったような気はしますが、南北50km前後もある巨大湖だから「遙か彼方」の状態は変わりません。
 霞の彼方にぼんやり浮かぶ山並みは、それでも頂上をきれいに見せてくれています。1時間あまりの遊覧が終わるころには、北側のクインゲイ・アラ・トーに雲がかかり始めました。

●岩絵野外博物館
 次は湖畔にあるチョルポン・アタ岩絵野外博物館へ。15分ほどで到着。北側の山麓に大小の岩石がごろごろする不思議な空間が広がっていました。クインゲイ・アラ・トーから流れ出した土石流が造り出した扇状地です。この岩石に動物や人間の絵が描かれています。その数は900個以上、いや1000個以上とも。
 何はともあれ、案内役の女性に従って岩絵見学へ。けつまずかないように注意しながら進むと、大きな岩にヤギと意味不明の絵が描かれていました。

●目が慣れて
 左右の岩石を見回しても苔や地衣類がへばりつく岩が多くて、そう簡単には見つけられません。「ここに馬がいます」。ガイドが指さす岩をじっと見つめて、やっとそれらしい形が浮かんでくるといった有様です。
 それでも同じことを何度か繰り返しているうちに目が慣れて、自分でも見つけられるようになってきました。黒っぽい岩に山ヤギや犬、馬、豹、人など、また、獲物を追う狩りの様子を描いたものもあります。山ヤギが断然多いようです。

●黒岩は牛の血
 岩石の原っぱは42f。途中から勝手に岩絵探しを始めました。主な絵には番号が書いているので、それを頼りに探していったら「ここにも」、「あそこにも」といった調子で発見できました。
 黒っぽい岩は牛の血を塗って黒くし、そこにヤギや馬を描いたといいます。絵はどれも微笑ましくなるような素朴なものばかり。

●絵の主は?
 ところで、これらの岩絵はいつ頃、誰が描いたものなの?。ガイドの説明によると、紀元前5世紀から紀元後14世紀に、ここに住んでいたウソン族が描いたといいます。
 また、紀元前2世紀から紀元後2世紀ごろ、周辺に勢力をのばしたイラン系民族のカサ族が描いたものという話もあります。この辺りにはウソン族もカサ族も住んでいたらしいので、どちらが本当?などという詮索はしないことにしました。

●キルギス族
 羊飼いのおじさんにも加わってもらい、湖をバックに集合写真を撮影。カルパックをかぶって羊や牛を追い、馬にまたがるキルギス族は、もとはシベリアのエニセイ川流域に住んでいた民族。その後、移住して地元の突厥、蒙古の部族たちと融合しました。
 民族の名は古くからあり、客好きで、礼儀を重んじる民族であると史料に記述されています。

●ブルーの窓枠
 おじさんにさよならして先を急ぎます。沿道のあちこちにバケツに大盛りしたリンゴの売店や干し魚売りが登場。湖のブルーはますます濃さを増し、南側の山並みがどんどん近くなってきました。
 12:30、イシク・クル湖の北西にあるの漁師町、バルチクに入りました。キルギスでは白壁にブルーの窓枠の家を多く見かけますが、この町も同じです。これもロシアの影響という話です。

●ドライバー2人
 昼食は町のレストランで。大きな牛肉とジャガイモだけのシンプルなスープが出ました。これもショルポ。「ニンジンのないショルポなんて」と思いましたが味は合格点。
 13:50、腹ごしらえもできて、200km先のナリンを目指します。ここからは道路が悪くなるのでドライバーが2人になりました。直後、大きな分岐点があり、そばの給油所でバスも昼食。イシク・クルに入るときに通過した場所ですが、今度は違う道を辿ることになります。

●癒しのダム湖
 滅多に車を見ない未舗装のがたがた道をひた走るバス。ぐいぐい迫ってくる雪の連山が唯一の楽しみです。
 14:25、荒野にエメラルド・グリーンの湖が現れました。オルトトコイというダム湖です。青空との見事なコントラストに車内では「きれい」の声が連発され、しばしの癒しタイムになりました。

●陽光に輝く
 その後も雪山が迫り、いたるところにビューポイントがあります。1度でいいからバスを止めて写真タイムをとってほしいと思うのですが、トレッキングガイドの青年には見慣れた風景。こちらの願いなど届くはずもありません。
 14:45、コチュルという町でバスがストップ。手作りのフェルト店に立ち寄りました。この手の買い物には興味を失っているので、周辺をぶらついて時間つぶし。木立越しに眺める雪山は午後の陽光をたっぷり浴びて光り輝いていました。 
 
●目前に雪山
 15:10、ナリンまではあと1時間あまりの辛抱。山並みを間近に眺めながら次々に現れるカーブを乗り切って高度を上げます。峠の途中、標高1550m地点で写真タイム。辿ってきた道が眼下にくねっていました。バスはさらに高度を上げて3050mの頂上に。雪山が目の前に迫っています。
 その後はバスは岩山の裂け目を突進するように下りました。両サイドは崖。わずかな斜面に遊牧民のユルタが点々。煙がゆるゆると立ち上っています。夕餉の準備でもしているのでしょう。山間の夕暮れは早い。

●部屋で宿泊
 17:15、ナリンの郊外に入りました。頭に白や黄色の大きなリボンを付けた女の子が下校中。みんなにこやかで可愛らしい。モスクのような立派な墓が並んだ墓地をすぎて、標高2070mのホテル「セレチャル・マウンテン」に到着。
 ホテルは部屋数が少ないので、戸外のユルタで男女別に4人共同の宿泊になることもある、と事前に説明があったホテルです。今回は手回しがよかったか、全員が本館の部屋に泊まれることになりました。

●清潔な部屋
 シャワー、トイレは共同だし、部屋も悪そう。覚悟を決めて割り当ての2階7号室に入ってびっくり。部屋は広いし、ベッドも清潔。バスタブ、トイレが完備し、テレビや机、サイドテーブルもあります。幸運にも最高の部屋が当たったようです。
 共同のトイレやシャワーも部屋の数だけあって清潔。経営者がイギリス人だと知って「だからきれいなんだ」と全員が納得しました。

●ナリン
 夕景が見たくて外に出てみると、上空がピンク色に染まっていました。ホテルはやや高台にあるらしく、ナリン川と集落が下方に望めます。
 ナリンは中国国境に近い町で、市内を流れるナリン川は総延長535kmの国内最大。天山山脈に源を発し、フェルガナ盆地でシルダリア川と名前を変えます。ロシア語の看板が目立つ町は何となく暗い感じです。だだっ広い道路が寒々と思えたのは夕刻という時間帯だったからかも知れません。しかし、ナリンは国内でもっとも貧しいといわれる地方。的はずれの印象でもなさそうです。

●夕食混雑
 ホテルの庭にユルタが4個並んでいます。1個は土産物店。あとの3個は宿泊用。ここにはヨーロッパ系の男女が泊まっていました。
 19:00、ホテルのレストランで夕食。ユルタの男女なども一緒なので狭いフロアはぎゅうぎゅう詰めの状態。従業員もてんてこ舞いの忙しさです。

●誕生祝い
 食事の前に持参品を腹に詰めたので食欲がなく、ひと足早く部屋へ戻ろうとしたら添乗員から「誕生祝いがあるから席に戻るように」と促されました。ややあって部屋が真っ暗になり、蝋燭を灯したケーキらしいものが運ばれてきました。
 25日に誕生日を迎えたA夫人と29日に迎える妻のお祝いでした。「カシュガルで誕生祝いしてもらえるかな」を夫婦の話題にしていたので、突然の祝福にびっくりです。

●馬乳酒にご用心
 ハッピーバースディーの合唱の後、添乗員から壁掛けがプレゼントされました。ケーキと思ったのは饅頭のようなお菓子。大皿に20個ほど盛ってある風変わりなもの。ユルタのお客にも振る舞いました。
 席上、馬乳酒がお気に入りの女性が今朝、買った瓶を開けようとしたら白い液体がシャンペンのように四方に飛び散りました。がたがた道を揺られて発酵が進んだらしいのです。とんだハプニングに一時騒然でした。


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