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◎9月20日(月)晴 (2日目)
  ウルムチ市内観光→ウルムチ泊

●ウルムチ到着
 活字は目が疲れるので、じっと目をつぶって時間との戦いです。機内がざわめいて1:12、ウルムチ空港に着陸。定刻より30分ほど早い到着でした。中国の空港にはポーターがいないので、カート4台にスーツケースを乗せて、かなり遠いバスの駐車場まで運びました。
 駐車場には小型、中型バスが10台ほど並んで客待ち。CZ3911便に同乗していた赤い帽子、白い帽子の中国観光団もそれぞれのバスに乗り込んでホテルへ向かいます。

●新彊時間
 2:00、現地ガイドの恵 強さんに迎えられ、バスで25km離れたウルムチ市街のホテルへ。気温20度、湿度35%。話に聞いていたよりもずっと暖かです。
 こんな時間にもところどころで人影を見かけます。中国の西のはずれ、新彊ウイグル自治区も公式には北京時間を採用しています。しかし、実際には北京とは2時間も時差があり、漢民族は北京時間を、少数民族はいわゆる「新彊時間」で日常生活を営んでいます。新彊時間なら0:00前後なので、夜遊び帰りの人がいても不思議な時間帯ではありません。

●20階建てホテル
 2:30、ホテル「新彊假日大酒店」に到着。かつてはホテルチェーン店のホリデー・インだったそうで、20階建ての外観はなかなかのもの。部屋のスペースは広く、清潔で設備も上々です。
 狭い機内で疲れましたが、熱いシャワーを浴びてすっきり。スーツケースを広げ、明日からの観光準備をしてベッドに潜ったら4:00を回っていました。

●新彊ウイグル自治区
 ウルムチのある新彊ウイグル自治区は、中国西北部の砂漠地帯で面積は166万平方km。中国31の省、自治区、直轄市のなかで最も面積が広く、全国土の6分の1を占めています。日本全土の4倍以上もあるというから驚きです。
 人口は1700万人で半分以上はウイグル族。他に漢、カザフ、回、キルギス、蒙古、シボ、タジク、ウズベク、満州、タタール、スラブなどの民族が暮らしています。

●長い国境線
 広大な新彊ウイグル自治区は、西は中央アジア、北はロシア、南西部はアフガニスタン、パキスタン、インドの8カ国に接し、その国境線は5600kmにも及んでいます。国境線の最も長い省(区)として、古くから東西交易の重要ルートでした。自治区が成立したのは1955年。 地形的には北はアルタイ山脈、中央に天山山脈、南に崑崙山脈が走り、北疆と南疆と2つの地域に分けられています。

●北疆と南疆
 北疆はアルタイ山脈と天山山脈に挟まれた地域。ジュンガル盆地に緑豊かな草原地帯が形成されています。その代表的なオアシスがウルムチです。
 一方、南疆は天山山脈と崑崙山脈に挟まれた地域。タクラマカン(塔克拉馬干)砂漠のある中国最大のタリム盆地が広がり、周辺にはオアシス都市が点在してシルクロードの中継点として重要な役割を担ってきました。その代表的な町がカシュガル(喀什)です。

●ウルムチ
 2連泊するウルムチ(烏魯木斉)は新彊ウイグル自治区の区都。総面積は1万2000平方q。人口は約200万人で漢民族が75%、ウイグル族が12%を占め、他はカザフ、モンゴル族などが生活しています。
 シルクロード3ルートのうちの一つで、天山山脈の北側を通る「天山北路」にある標高915mのオアシス都市。ウルムチとはモンゴル語で「美しい牧場」、ウイグル語で「団結」を意味します。

●シルクロードの要衝
 ウルムチはユーラシア大陸の奥地に位置し、ウルムチ川畔に拓けました。現在は自治区の区都として、新彊の政治、経済、文化の中心であり、蘭新鉄道の終着点として各種の工場が建ち,中国西北部の政治や経済、交通の中心として発展を続けています。
 かつての城壁は取り壊され、高層ビルがメイン通りに建ち並び、アパートが林立して様相を一変させました。

●高層アパート 
 7:00、戸外はまだ闇に包まれています。多くの人々が使う新彊時間に適合する時間帯です。やや明るくなってきた周辺を眺めると、緑の中から高層の建物がにょきにょきと生えていました。
 どれも20階以上はあるアパート群。近年新築されたらしく、ぴかぴかの外観が朝日を待っていました。ユーラシア大陸の奥地、最果ての地であるオアシスは新しい町づくりを目指す建設ラッシュのただ中にあります。

●ハミウリ
 朝食は品数豊富なビュッフェスタイル。麺類や巻きずしまで用意され、季節の果物「ハミウリ(哈密瓜)」もありました。
 黄色っぽい果実はしゃきっとした歯ごたえ、ジューシーで糖分たっぷり。ハミウリはまさに「ウリの王様」にふさわしい美味でした。出発の前、旅の友人が「いまはハミウリやブドウ、リンゴ、スイカ、ザクロなどの果物が美味しい季節。ぜひ賞味を」と教えてくれました。さっそく王様の美味にありつけたわけで、これから先の楽しみが倍加した思いです。
 ヨーロッパ人の宿泊客が多いのは、やはりシルクロードの魅力に惹かれてのことと思われます。

●仲秋と月餅
 ホテルの玄関ロビーに「仲秋」の赤提灯が飾られ、一角には月餅とワイン、月餅と陶器などのセットを展示するコーナーが設けられていました。セットには250、350、700元などの値段が付いており、予約伝票を手にした男女がそれと引き替えにセットを受け取って行きます。
 中国では仲秋の名月の行事として、親戚や友人、会社の上司などに月餅を贈る習慣があります。経済成長とともに、だんだんエスカレートして最近では1ヶ月も前からホテルやデパートで商戦が始まり、内容も豪華になってきているといいます。 

●旅の猛者たち
 今日の市内観光は正午からなので、部屋に戻って休息がてらの時間つぶし。昼食はバスで10分ほどの城市大酒店で新彊料理です。シシケバブが香ばしく、ナン(薄焼きパン)と羊肉を煮込んだ料理が好評でした。他にはトマトと卵のスープ、揚げ豆腐と野菜の炒め物など、など。
 食事中に自己紹介。海外旅行60回や100カ国訪問目前という旅の猛者がおり、シリア・ヨルダンの旅で一緒だった女性の顔もありました。今回は男女の数が逆転し、男性が2人多い構成です。

●はげ山に植樹
 最初の観光地は市のシンボルである紅山公園。バスの車窓から眺めるウルムチの町は、いたるところで建物の新築や道路の改修工事が進んでいて、何となくざわめいた感じが伝わってきます。新しい建物が次々と車窓に流れ、活況ぶりは目を見張るばかり。
 市の中心部にそびえる標高935mの紅山一帯が公園になっています。かつては赤褐色(紅色)のはげ山でしたが、近くの小、中学生たちが授業の一環としてニレや松の植樹を続け、現在の公園に整備されました。

●紅山公園
 坂道を辿ると、お寺のような風格のある建物が目に。「あれは展望所。特別な建物ではありません」とガイドの恵さん。玉皇閣と呼ばれる建物では?。次に現れるのが真っ白い彫像。見上げるばかりの大きな像は、阿片の密輸禁止に尽力した林則徐の立像。
 アヘン戦争は彼がアメリカやイギリスの商船から阿片を没収して焼却したのがきっかけで勃発しました。驚いた当時の朝廷は彼を新彊に左遷して、列強のご機嫌を取ったといいます。林則徐の立像が紅山に設けられている理由はそこにあったのです。

●鎮龍塔
 山頂に茶褐色をした9層の鎮龍塔がそびえています。2匹の龍が暴れてウルムチ川を度々氾濫させたという言い伝えをもとに約200年前に建てられました。向かいのヤマリクサンにも同じ鎮龍塔が建っています。ヤマリクサンは天山山脈の一部。ウイグル語で「羊の家」を意味するそうです。
 市内には600もの公園があり、最も大きいのはホテル「新彊假日大酒店」のそばにある中心広場、紅山公園は2番目の規模です。山麓には大佛寺と北斗宮、地蔵寺などの寺院が建っていますが、今回は見学する余裕時間がありません。

●躍進の町
 公園からは躍進するウルムチの市内を眺望できます。幅の広い幹線道路が縦横に走り、ベージュ色の高層ビルが林立する様は、これが最果てのオアシス都市?と首を傾げたくなる近代的な大都市の光景です。
 かつて龍に洪水を起こされたウルムチ川もいまは西に流れを変え、紅山高速道路に姿を変えました。遙か遠くにぼんやりと天山山脈のボコダ峰(5445m)が望めました。

●同心鎖
 すさまじいばかりの変容ぶりに驚嘆する一行。その足もとに張られた鎖に無数の鍵がぶら下がっていました。名前を彫った鍵が午後の日差しに鈍く光っています。若者たちが恋の成就を祈願して掛けたものです。
 「同心鎖」の石碑まであり、愛鎖紅山の文字も刻まれていました。日本でも一時流行ったことがあります。恋心はいずこも同じなようです。

●新彊にシェスタ
 14:05、新彊ウイグル自治区博物館へ。あちこちの屋台で食事中の人を見かけます。新彊時間ではちょうどお昼時なのです。
 こちらでは夏場の5月1日から9月30日までの間、13:30から16:00頃まで休み時間をとる人が多いと聞きました。盛夏には40度にもなる地域。シェスタ(お昼寝タイム)は合理的な体力温存法です。50度にもなる猛暑のトルファンではもっと長い休憩をとるそうです。リュックを背負って一時帰宅する児童もいます。

●多民族都市
 北京時間と新彊時間の調整はなかなか難しいようです。会議場や劇場、スポーツ施設などでは両方の時間を表示しているとか。
 「中国に56民族あり」といわれ、その中でも数多くの少数民族が住む新彊ウイグル自治区。ちょいと見の観光客には計り知れない事柄がわんさとありそうです。

●古ぼけた建物
 ウルムチのイスラム教徒の大半は市の東側に住んでいる―。恵さんの話に聞き入っていたら30分ほどで博物館に到着しました。新しい博物館の建設現場を横目に進んだ先にある古ぼけた建物が現在の博物館でした。
 自治区最大の規模を誇る博物館と紹介されていたので、立派な建物を想像していたらまったくの大違い。

●新館の建設
 現在の建物は展示場が狭く、貴重な所蔵品を持てあましているので、隣に新しい博物館を建設しています。着工3年になるのですが、資金不足で中断したりして進捗のほどははかばかしくないといいます。
 それでも外観はほぼできあがっていて、来年('05年)10月にはオープンできそうという話です。

●新彊ウイグル自治区博物館 
 ともかく館内に入ってみました。シルクロードで栄えた諸都市から発掘された文物のコレクションが「歴史文物陳列室」、「民族民俗陳列室」、「古屍陳列室」の3コーナーに展示されています。
 「歴史文物陳列室」は文物を中心に、また「民族民俗陳列室」はウイグル族などの民族の衣装や住居などを主に展示しています。しかし、博物館の自慢は「古屍陳列室」です。
 楼蘭やトルファンなどの砂漠から出土したミイラ10体を公開し、別名「ミイラ博物館」と呼ばれるほど。乾燥地帯、しかも粒の粗い砂地で水はけがいいので、どのミイラも保存状態は良好です。館内のカメラ撮影は禁止。

●楼蘭の美女
 真っ先に見学したのは目玉中の目玉「楼蘭の美女」。1980年に楼蘭故城の遺跡から発掘された女性のミイラ。細面の顔だちで目が大きく、髪の毛は明るいブラウン。人種はヨーロッパ系。日本でも展示公開されたことがあるので目にした人も多いはずです。
 足には鹿の皮の靴を履き、頭にはイーグルの羽根飾りのあるフェルトの帽子をかぶっています。横には化粧品や食べ物が入ったバッグも添えられていました。埋葬の時期は紀元前1800年ごろで、年齢は45歳、身長157cm、血液型はO型。最近の科学は4000年も前の遺体の何もかもを暴き出してしまいました。

●暴き出す科学
 「楼蘭の美女」の名付け親は日本人だとか。日本で展示公開されたときに、誰からともなく、そう呼ばれるようになったらしいのです。「日本人はネーミングが上手です」とは館内ガイドの言。
 楼蘭の美女は発見された当時、確か14、5歳のうら若き新妻と騒がれました。しかし、科学は45歳をはじき出して、人々のロマンを消し去ってしまいました。その後に見た鼻の脇に入れ墨のある女性はウイグルとヨーロッパ人の混血だとか、将軍は馬にまたがっていたからO脚だとか、つい最近、黄泉の国へ旅立った人のような解説ぶりです。


●伝統行事
 今日の観光はこれで終了。ホテルへ向かう道すがらにも月餅商戦の大きな垂れ幕や看板が目立ちます。月餅は陰暦8月15日の中秋節の伝統的な食べ物。中秋の満月は1年中でもっとも大きくて、しかも美しく輝くといわれ、中国の人は丸い月を一家団欒のシンボルとして、この日に丸い月餅を食べることになったということです。そんなことから「団圓餅」とも呼ばれます。
 今年の名月は9月28日。中国では古くから月餅を贈る習慣があるのですが、5、6年前からにわかに商戦が活発化してきたといいます。

●月餅秘話
 月餅の誕生秘話は諸説あるそうですが、圧政に苦しむ人たちが中秋節に反乱を計画し、仲間への伝達手段として、饅頭の中に大事をしたためた紙を入れて届け、それが現在の月餅になったというのが一般的です。
 かつては小豆、松の実など10種のあん入りしかなかく、値段も1個1元程度だったそうですが、最近は次々にオリジナル作品が登場して100種以上に増えているとのこと。値段も跳ね上がり、1個100元というのも珍しくないという話です。

●日本語の解説
 贈り物の相場は250元から500元。日本の中元か歳暮のようなものだね、といったら恵さんはきょとんとしていました。よく理解できなかったようで「大騒ぎしているけど、中国の人、あまり月餅を食べません。仲秋の名月がすぎたら姿を消してしまいます」と続けました。
 流ちょうとはいえませんが、まずまずの日本語を話す恵さん。親しげな笑顔の解説に耳を傾けていたらバスはホテルの玄関前に着いてしまいました。

●海に遠い町
 周囲を山に囲まれたウルムチは、世界でもっとも海から離れた町です。どの海からも2500kmほど離れており、生涯海を見ない人がほとんど。正確には南西30kmにある水豊郷・包家子村が海にもっとも遠い地域になるそうです。
 そんな話を聞くと、とてつもない内陸部に足を踏み入れたものだ、という実感がわいてきます。

●47民族
 車窓から眺める住民の顔は実に多様。よそ者にもある程度の区別がつきます。恵さんによると、ウルムチは大まかにいって13民族の町ですが、100人単位の部族を含めると、なんと47もの民族が暮らす多民族都市だそうです。

●ウイグル文字
 夕食は町のレストランで。友好北路、南路を走ってカラフルな外観の「草堂人家」へ。道すがら眺めた商店などの看板には中国語の上にウイグル文字が併記されています。アラビア文字にそっくりなので、門外漢には区別がつきません。
 イスラム教を信仰するウイグル族は、アラビア文字に似せた独自の文字を考案して日常語として使用しています。役人もウイグル人を最優先に採用し、中国語とウイグル文字の併記は義務づけられたものなのです。 

●大学の町
 大学生と思われる男女の姿も目立ちます。ウルムチは13もの大学がある学問の町でもあるのです。ウイグル族の中にも最近は漢民族の学校に通う子が増え、大学入試の場合は採点で有利な計らいをしてくれると聞きました。
 日本語学科はあるの?、の質問に、恵さんは「それは職業大学で学びます」と応じました。

●白菜が人気
 夕食は大きな円卓を全員が取り囲んで、四川、ウイグル、新彊のチャンポン料理に舌鼓。柔らかくて甘みのある白菜が絶品で、お変わりの催促も出るほどの人気でした。
 総勢12人なのでまとまりがよく、旧知の間柄のような親しい会話が弾みます。食事にはビールとスプライトなどの飲み物もセットされているので、酒好きにはありがたいことです。

●新彊ビール
 テーブルに並んだのは「新彊ビール」。口当たりはさらっとしていて「ちょっと頼りないね」というのが大方の感想でした。
 「新彊ウイグル自治区にはまだまだたくさんの銘柄がありますよ」と聞いて、「そりゃ、楽しみだ」との声も発せられましたが、男性7人のうち、根っからの酒好きはわずか2人、ぼちぼちが1人、4人はほとんど飲まない、という極めて珍しい構成です。喫煙者はゼロ。
 就寝前。ヤマリクサン方面を見たらライトアップの明かりが輝いていました。


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