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◎3月20日(土)晴 (10日目) 
 朝夕、公園内をサファリドライブ。アンボセリ泊

●日の出前
 夜中にゾウがほえたり、他の動物の鳴き声が聞こえていました。周辺の草むらでは虫の音が絶えることがありません。
 今日は早朝からのサファリなので、5:50にフロントへ出かけました。用意されていたコーヒーを飲み、クッキーをつまんでいたら東の上空が徐々に赤みをおび、その下ではゾウやバッファローのシルエットがスローモーションのように動いています。

●サファリに時間制限
 日の出を見届けずに発車。直後、草原にするすると朝日が昇りました。6:40。写真を撮って、そそくさと「トゥエンディ(さあ行こう)」。ケニア国内のサファリには1回2時間以内という厳しい時間制限があります。もちろん、
アンボセリ国立公園内も例外ではありません。だから「ポレポレ」とはいっていられないのです。
 6:30から公園のゲートが開き、18:00にはクローズされます。その間に少しでも多くの動物が見たい!。ドライバーのサミーを急かして、サファリ道へ乗り入れました。

●アンボセリ国立公園
 ところで、朝夕の2回サファリを予定しているアンボセリ国立公園は、キリマンジャロ山(5895m)の山麓に広がっており、面積は392平方kmあります。キリマンジャロ山が噴火したときにできた古アンボセリ湖の水が干上がってできた平原だそうです。
 公園内では象やキリン、シマウマ、ダチョウ、セグロジャッカル、ヌー、トムソンガゼル、バッファロー、アフリカハゲコウ、オオジロカンムリヅルなどが見られますが、近隣の公園や保護区を行き来しているので、生息数はつかめていません。

●乾期の草原
 3月いっぱいは雨が降らないという乾期の草原は赤茶けて見えますが、その中でも動物たちは逞しく生きています。カンムリヅルのカップルがのんびり歩く、その足もとの土がやや白っぽいのは、キリマンジャロ山の火山灰が乾燥しているため。
 乾期のアンボセリ国立公園でも湿地帯があります。キリマンジャロ山の雪解け水が地下から浸みだして各所に水たまりをつくっているのです。サファリ道沿いにもあり、その周辺だけは緑が豊富な別世界。黒トキや青サギが餌探しに忙しそうでした。

●ハイエナとライオン
 ブチハイエナのカップル、朝からくつろぐライオン。そのたびにサミーは車を止めてくれます。写真が終わると「アサンテ(ありがとう)」、「カリブ・サーナ(どういたしまして)」を繰り返しながら、次の動物を求めて移動。
 時間制限があるので、サファリ道に散らばるサファリカーも先を急いでいるように見えます。しかし、次々に動物が登場するので、われわれは出来るだけ「ポレポレ」で行こう。

●ゾウが道路横断
 草原の奥にゾウの群れが現れました。アンボセリ国立公園はアフリカゾウの生息地としては東アフリカ随一といわれ、ざっと800頭を数えます。目の前の群れは子ゾウを守りながら移動する30頭ばかりの一団でした。
 場所を移すと、今度は道路際にやはり30頭ばかりの集団。アマザギを従えて堂々と行進。ついには目前のサファリ道を横断しました。セレンゲティ、ンゴロンゴロでも遭遇した光景ですが、いつ見ても迫力のあるゾウの移動です。

●大干ばつも
 ゾウの移動で忘れられないのが2001年9月に放映されたNHKの「地球・ふしぎ大自然」。その前年、サバンナは40数年ぶりという記録的な干ばつに見舞われ、アフリカゾウの家族が水場にしていた湿地も干上がってしまいました。
 途方に暮れた30頭ほどが水と草を求め、ケニアからタンザニアまで200kmにも及ぶ旅をしました。泥を鼻で掘り、わずかにしみ出た水を分け合う様子が活写されたドラマに胸を打たれたものです。

●湿地帯に野鳥
 次はトムソンガゼルの群れ。赤ちゃんがおっぱいをせがむ様子に微笑み、湿地帯へとやって来ました。マゼランガンをはじめ、ペリカン、オニアオサギなどが岸辺や水上で思い思いに過ごしています。
 何が目的なのか、ハイエナ1頭がとことこと鳥の中へ歩み寄ってきました。一斉に飛び立つ鳥たち。居残ったのはオニアオサギだけ。ハイエナはすぐに来た道を引き返しました。動物たちの小さな動きを観察するだけでも楽しいものです。

●水辺に黒トキ
 草食動物たちが食い尽くして裸同然になった草原に、動物の骨が散乱しています。大きな骨はゾウやバッファローのものに違いありません。また、水たまり。黒トキのカップルが憩っていました。 
 公園では1992年から翌年にかけて大洪水に見舞われました。あれから10年あまり経ちますが、その時に出来た水たまりが沼となって地下水を集めたりして、水鳥たちに憩いの場所を提供しているのだといいます。干ばつと洪水。公園の環境は温暖化の影響を受けて厳しさを増しています。 

●オブザベーション・ヒル
 湿地帯の近くにこんもりした丘があります。天辺には見張り小屋のようなものも見え、高さは20mもなさそうです。一行はこれから丘の上で朝食にします。
 ケニアの国立公園は車外に出ることを禁止されていますが、ここオブザベーション・ヒルだけは例外。「アンボセリの展望台」といわれ、好天ならキリマンジャロ山が望めるビューポイントです。

●緑と赤茶色
 8:40、丘に到着するのを待っていてくれたかのように、キリマンジャロが山頂を見せてくれました。10分ほど上れば丘の上。眼下のサバンナには豊かな緑の湿地帯と茶色の草原がまだら模様になって広がっていました。
 湖沼が多いのには驚きです。温暖化によってキリマンジャロ山の氷河が急速にとけ出し、地下水位が上昇。塩分を含んだ湿地帯が広がって、大型肉食動物に影響を与えていると聞いたことがあります、さもありなん、を思わせる風景です。

●風に吹かれ朝食
 丘の上には食事のセッティングがされています。テーブルや椅子が並び、卓上にはグラスや皿がセットされていました。ロッジのコックが出向いて準備してくれたものです。
 シャンパンで乾杯した後、ビュッフェ式の食事。野菜、肉類が豊富で、パンも美味しい。すがすがしいサバンナの風に吹かれながらの食事は格別の味でした。その間にキリマンジャロ山は姿を隠してしまい、タンザニアのメルー山(4556m)も残念ながら望めませんでした。

●サバンナ展望
 食後はしばらく休憩。サバンナを展望すると、草むらにゾウがいたり、バッファローがいたり。窪みに横たわったままのバッファローもいます。だれかが「あれは、じっと死の時が来るのを待っているのだ」と話していました。
 キリマンジャロ山にかかる雲はなかなか動きそうにもないので、10:00、日程のマサイ村見学へ向かうことに。

●マサイ村へ
 車は公園をはずれて、溶岩のでこぼこ道を走行。200年前のキリマンジャロ山噴火の際に飛んできた溶岩だとか。黒々した岩が沿道にもたくさん積み上げられています。周辺にはンゴロンゴロのマサイ村でも見た低い屋根の家が集落をつくっていました。
 20から30棟が固まった集落が点在しており、一行が訪れるのはそのうちの一つ、インチュー村です。 

●棒はシンボル
 事前に連絡があったのか、赤い布をまとった20人あまりの男衆が村の入り口で待ちかまえていました。全員が棒を手に手に携えています。
 長さも形も少しずつ異なってはいますが、棒はマサイ族の男性には欠かせないものなのです。時には敵と向き合い、時には杖となり、時には牛追いの道具になります。小さな子供でも手にするマサイ族のシンボルです。

●衣装やヘアスタイル
 大人の男性を証明する赤い布もよく見ると、多彩な色があり、デザインがあります。赤が主流には違いないのですが、色合いは微妙に異なっています。デザインもチェック、縞、無地と様々。女性はさすがにおしゃれ。布の模様も色合いも男性より、遙かに豊富です。
 男女のヘアスタイルも目を惹きます。男性の大半は前頭部を剃り、後頭部は長髪に。もちろん丸坊主もいます。女性は大人になると全員が丸坊主に。あでやか装飾品で身を飾ったマサイは数多い部族の中で異彩を放っています。

●男女の歌と踊り
 歓迎の踊りと歌の後、村長の息子さんの案内で集落へ足を踏み入れました。まず、牛糞の壁が並んだ集落の中央広場?で親愛を確かめる踊りと歌。男性は体を前後に揺って士気を鼓舞する踊りと得意のジャンプを交代交代に披露してくれました。
 女性たちはきれいなハーモニーを聞かせ、2人ずつがジャンプして親愛の情を示します。飛び上がるたびに、首に巻き付けたネックレスやビーズの装飾品がカシャカシャと伴奏役をしていました。

●火起こし実演
 広場の一角で、男性数人が火起こしを実演してくれました。乾燥したゾウの糞の上にアカシヤと杉の木でつくった道具をおき、ごしごしこすって火を起こします。牛の糞といい、ゾウの糞といい、一つも無駄にしないエコ生活に脱帽です。
 次は裏の広場でお決まりの土産物販売。木彫り、ビーズ装飾品などを並べ「10ダラー、5ダラー」と叫んで買い手を誘っていました。

●インチュー村
 インチュー村も写真撮影は自由。旅行会社の方で1人20ドルの訪問料払っていると教えてくれた人がいました。木陰で憩う村人、ありとあらゆる装飾品で飾った女性、棒を手にすまし顔の青年たちをカメラにおさめました。ここには笑顔があり、表情にも余裕がありました。人慣れしているのでしょう。
 村の住人は150人。一夫多妻で男が妻の家を順に訪問する習わし。最高齢は73歳のおばあさん。薄紫の衣装に身を包み、穏やかな表情はさすがに年輪を感じさせました。

●牛糞対策
 お別れの歌と踊りに送られて集落を後にしましたが、小さな集落を一巡した靴底には牛の糞がびっしり。地面は牛糞だらけ。避けようにも避けられない状態です。
 靴底に付着した糞をとるのは容易ではなさそう。男性の1人が履き捨てにする靴を持参していました。これは最良の策。

●教材不足
 案内役をつとめてくれた村長の息子さんから「45人の子供が学校で学んでいるが、教材不足に悩んでいる。ペンなどがあれば寄付してほしい」との要請があり、手持ちの鉛筆数本を差し出しました。
 いくつも集落があるのに、訪問客があるのはこの集落だけ?。気の毒に思っていたら、別の集落にもサファリカーが入っていったので、ほっとしました。

●のんびり昼下がり
 11:50、いったんロッジに戻りました。さっそく靴の牛糞落とし。靴底の溝に入り込んだ糞を爪楊枝で掻き出し、ペットボトルに水をくんで洗い流します。隣室のHさんも同じことをしていたのでおかしくなりました。
 昼食の後は16:00まで休憩。キリマンジャロ山は依然として雲の中。防護柵の向こうではゾウやバファローがのんびり。玄関前の椅子にもたれていると、周りにはたくさんの野鳥が舞い降りてきます。のどかな昼下がり。疲れも手伝ってまどろんでしまいそうです。

●モンキー親子
 ベルベットモンキーがロッジの屋根や木々を伝って走り回っています。従業員が追い回しているところを見ると、残飯狙いの招かざる客のよう。庭にも親子がいて、こちらは宿泊客の人気を集めていました。
 広場の一角では数人が鎌を左右に振り上げて草刈りに精を出しています。薪を運ぶ男女もいます。「イベント?」と尋ねたら、にっこり微笑んでいたので、今夜は何か催しがあるようです。

●バブーン見送り
 ホテルの周りをうろうろして時間が過ぎ、16:00に夕方のサファリへ出発。キリマンジャロ山の雲はまだ晴れません。キリマンジャロ山の夕景を狙うと言って不参加の人もいます。
 大きなバブーン(サバンナヒヒ)が塀の上からお見送り。ふてぶてしい態度からロッジへの出入りは自由な様子。通電の柵も役に立たないようです。これではガードマンが必要なわけです。

●密生する草
 ロッジの敷地は防護柵を隔てて公園と隣接しているので、ものの数分もあれば公園ゲートです。遠くに「三色ウミワシ」がいるといわれて目をこらしましたが、千里眼にほど遠いわれわれにはただの黒い鳥にしか見えません。
 車は午前とは違うコースに乗り入れました。水辺に出るとエジプトガンの奥にゾウが1頭。例によってアマサギを引き連れていますが、足もとまで草に埋まっています。乾期というのに、水辺には丈の長い草が密生。珍しいというアフリカヘラサギが1羽だけ、エジプトガンに混じっていました。

●1台に4人
 夕刻のサファリをパスした人が多いらしく、どの車にも4人しか乗っていません。自分たちの車も4人。これは楽です。
 サファリカーは通常6人(乗客)が定員。しかし、車内が狭いので写真好きが多い場合は、撮影場所を巡るいざこざが起こるのではと心配になるほどです。

●ドライバーに感謝
 ゾウのファミリーがいて、車がストップ。停車位置が気に入らないので「サミー、ちょっとだけ前へ」とゼスチャーで注文をつけました。「OK」。サミーも心得たもの。嫌がらずに応じてくれるからうれしいです。
 これまでのサファリで、それぞれのドライバーに何度も同じような注文が出ました。自分は記念写真派なので、動物が写ってさえいればいいのですが、中にはシャッターひと押しにかける一発入魂派もいます。「少しだけ前へ」、「行き過ぎた。ちょっとだけバック」などの注文も度々。その都度、ドライバーたちは快く聞き入れてくれました。「アサンテ・サーナ」。本当にありがとう。感謝、感謝です。 

●ライオン家族
 遠くの原っぱにカバが1頭。近くの沼から陸に上がって夕餉を楽しんでいました。車を進めた木陰にライオンのファミリー。5頭の子供がかたまってサファリカーを好奇な目で眺めています。
 近くの藪に横たわる母親。余裕の表情を見せていますが、全神経は子供たちの動静に注がれているのでしょう。そのうち、お姉さんらしい1頭が母親の元にすり寄って甘えだしました。微笑ましいライオン家族。

●ちょっとだけよ
 2時間の制限時間が刻々迫ってきます。17:40。キリマンジャロ山の厚い雲がちょっとだけ払いのけられて、山頂部が顔を見せてくれました。
 「アンボセリに来てキリマンジャロ山が見られないなんて」。そんな嘆きが聞こえてきそうな雰囲気だっただけに、ちょっとだけよ、の山容にも大はしゃぎ。「見えた」、「見えた」が連発されました。

●野趣の晩餐
 17:55、ロッジに戻りました。期待の夕景はいまひとつでしたが、キリマンジャロ山や周りの雲に淡いピンク色がかかりました。楽しませてもらったサファリも明日の午前中を残すだけに。
 夕食は戸外でのバーベキュー。従業員が草刈りをしていた場所です。運んだ薪が赤々と燃えさかり、野趣に富んだアンボセリ最後の晩餐。ビーフ、チキン、ポーク、ソーセージなど、どんどん腹におさまりました。

●撮影ツアーも
 今夜は別の日本人グループ20人ほども同宿。ケニア訪問100回以上を数えるという写真家の平岩道夫さんと娘の雅代さんに同行したメンバーです。ケニアを中心にした動物写真の撮影ツアーだそうです。
 平岩さんが自ら撮影した写真入りのカレンダーを、われわれにもプレゼントしてくれました。

 
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