書評しまひょー

過去から現在にかけて、使用した教材等の使い心地を書いてみました。
今後、「使おっかな−」と思ってらっしゃる方の、ご参考になれば幸いです。
あくまでも、個人的意見ですので、対象者、レベル、学習目的によってずいぶん変わると思います。あしからず。

 

教科書編

  新日本語の基礎T、U (スリーエーネットワーク)

 関西の日本語学校にいたとき使用していた初級教科書。この仕事に携わる人ならば、知らない人はいないでしょう。経験のない日本語教師でも、安心して使えること、副教材が整っていることが何よりの利点。それと、練習問題の多さ。内容もかなり完成度が高い。ただ、難点を言えば、語彙の選択、会話の状況が今一つ。ま、これは、技術研修者ように作られたものなので、進学目的の学生に教えるにあたっては、しかたがないのですが。しかし、「エンジン」と「モーター」の違いを毎年教えるのはもうやめたい。それに、「シリンダー」ってなんだ?
 近年、「みんなの日本語」という新しい教科書が発売されました。ちょっとのぞいてみたのですが、なかなかよいです。いずれ、日本語学校は、こちらのほうへと移行していくでしょう。
 中国でも、この教科書の導入を何度も試みたのですが、中国人教師の反対にあってやめました。どうも、彼らにとっては、課文のない教科書というのは、練習問題集に見えてしまうようで、使えないらしい。そういう習い方をしていないからでしょうね。聞いてみると、まさに、「文法訳読法」習ってきているようです。いつか、この教科書のよさをわかってくれる中国人教師が現れることを待っています。

  中日交流 標準日本語 (光村図書/人民教育出版社)

 中国では一番ポピュラーな教科書。どこの本屋にも、ずらりと並んでおり、老いも若きも、これを片手に日本語を勉強している。文法の提出順もよし、課文もふんだんにある。値段も手ごろ、語彙も多い、しかし・・・・・・・しかし・・
穴が多すぎるぞぉー−−−−その助詞の適当さはなんだぁー−−−−
と、使ったことのある教師は誰しも叫んだことでしょう。練習問題も、「こういうことは隠しておかなくちゃ」という問題が、「ば〜ん」と出ていたり、これは、こんな風に並べないほうがいいんだけど、ということがあったり、とにかく困っちゃう教科書です。詳しいことは例をあげて、おいおい書いていきますので、お楽しみに。

  テーマ別 中級から学ぶ日本語 (研究社)

 日本で使っていた中級教材。初級からいきなり飛ぶにはかなりハードな内容ですが、個人的には気に入っています。初級終了後、初中級のワンクッションをおいてから、進むことをお勧めしますが、何せ、日本語学校では、そんな余裕がないものだから。読解性を生かしつつも、話す、聞くの練習もできる。ただ、時間の限られた日本語学校では、受験に必要な内容をこなすのが精一杯で、あまり使いきれなかったように思います(少なくとも、私は)。一年半コースの進学生に使うのはきつかったな。抜粋でもしてみましたが、あまりよくないと思いました。やはり、一冊の教科書は、順にこなしていくのが、一番ですね。あと、トピックがそろそろ古くなってきているので、改訂版が出るとうれしいのですが。

 

能力試験対策問題集編

  完全マスター 日本語能力試験文法問題対策(2級)(スリーエーネットワーク)

 今年初めて、2級対策の文法対策として使用しました。前からちょこちょこ使っていたのですが、最初から最後まで、全部使ったのははじめてです。注目すべきは、なんと言っても文法の提出順序。ほとんどの文法問題集は、カテゴリー別、あいうえお順で、提出されているので、文法だけを取り上げて授業で教えるには不向きなのですが、これは、難易度順に並べています。
 授業でこれを使用する上での利点は、初級終了後、すばやく2級文法の授業には入れること。また、付属の練習問題が、生きてくること。(カテゴリー別、あいうえお順では、練習問題に無理が出やすい。)また、練習問題が、単なる4択問題に終わっていないこと。
 欠点は、並べ方の性質上、あとで学生が一人で復習したり、辞書代わりで使いにくいこと、「難易度順」の基準が、教える人の個人差によって変わってしまい、教えにくくなること、また、似ているもの、同じ種類のもの「例えば『わけ』を使った文法」で整理しづらいこと。文法を教えるとき、どうしても、同じ意味のもの、同じ言葉を使っているものは、あわせて教えたくなります。このへんの兼ね合いが、難しいでしょう。しかし、次に2級対策をするとしても、私はこれを使うでしょうね。
 余談ですが、これには、1級もあります。しかし、私は授業では使ったことがありません。理由は、練習問題に4択が少ないから。個人的には、2級に、かかせる練習問題を多くして、1級はほとんど4択だったらいいのになぁ、と思いました。

  日本語能力試験 合格問題集(2級)(専門教育出版)

 文字語彙、聴解、読解文法それぞれの10回分の練習問題です。まず、一回分の量が非常に適当。また、とくにカテゴリーで分類していないので、演習として使いやすい。こういう形の総合的な問題集は他にあまりなかったように思います。
『これで合格2本後能力試験2級模擬テスト(アルク)』は、一回分が長くて、1,2時間の授業には不向き。
『日本語中級総合問題集(国書刊行会)』もかなり好きなのですが、惜しむらくは聴解問題がない。
『日本語実力養成問題集(専門教育出版)』は、・・・・・う〜ん、ちょっと内容がなぁ…。
というわけで、問題演習というと、やはりこれになってしまいます。ただ、内容が今の能力試験に追いついていない。ちょっとやさしめになっています。(とくに文法)もう少し、難しくても、と思う反面、最近難しさがエスカレートしている問題集も多いので、これくらいでいいのかなぁ、とも。<優柔不断

  新日本語総まとめ問題集『文法編』(アスク講談社)

 通して使ったことはありませんが、要所要所で必ず参考にしています。同じ性質のもの、似ている意味のものをまとめたいなぁ、と思ったときお役立ちです。
 とくによく使うのは、「わけ」「もの」「こと」などのまとめのとき。また、必ず使うのは敬語のまとめ。声を大にしていうが、これはすばらしい!(と私は思っている<弱気)。毎年必ず、これを使って敬語のまとめをします。もちろん、注釈は必要ですが。敬語部分はかなりお勧めです。しかし、難点は練習問題。とても、とても、とーっても難しいです。「そこまでしなくても」と思うこともしばしば。教えるほうも頭がこんがらがってしまうこともしばし。なんどかやらせたこともありましたが、学生も「お手上げ!」って感じでした。ちなみに、敬語をするときも、練習問題は自分で作成していました。

  日本語総まとめ問題集『実戦編』(アスク講談社)

 一級対策授業で使うのは、これが一番だと思います。内容は、文字語彙、聴解、読解文法の練習問題が6回分。何がそんなにいいかというと、それぞれの回についている「予習ページ」「復習ページ」。自分で辞書をひきながら、予習ページをしっかりしておけば、実戦問題練習が、かなり分かる。そして復習ページで定着させるという仕掛け。わたしはいぜん、これを夏休みの宿題にし、9月からこれを使って一級対策、という方法を取っていました。「実戦問題は、できるだけ。でも、予習ページは必ずしなさい」と言って。問題はかなり高度。ゆえに、2級レベルの学習者が使うには、ちょっと辛いものがあると思います。一級を目標とする速成のクラスでは、勉強法さえ学習者に徹底すれば、問題集を超えて、教科書にもなり得るでしょう。これを柱として、一級レベルの日本語能力を身につけるという点では、かなり整っています。しかし、読解問題は、そうとう手ごわいですよ。教える側も気を抜かないように。

  日本語能力試験直前対策(国書刊行会)

 これは、1冊の問題集ではなく、シリーズもの。文法(1、2級)・文字語彙(1,2級)が、それぞれすでに中国で出版されていて、ほとんどの生徒が持っていました。だから、授業では使ったことがないのですが、少し感想を。テスト形式になっているので、使いやすい。個人的には、文字語彙は非常に好きです。形式も、能力試験とほぼ同じだし、これを1冊終わらせれば、かなりの力がつくでしょう。文法は少々難しすぎるのでは?慣用的で、説明しにくい表現がよく入っている。(そのような表現が、頻繁に試験に出るのも知っているのですが。)というのが、学生の質問攻めにあった側からの感想です。たしか、日本では、読解編も発売されていたはず。一級対策で使って、かなり好感触を得ましたが、手元にないため、ここで言及するのは止めます。でも、中国での出版が待たれますね。読解問題は中国には少ないから。

まだあるんですが、ひとまずこのくらいで。

 

辞典、辞書編

 例解新国語辞典(三省堂)

 日本語教師ならば、誰でもこの問題で悩んでいるはず。
「はたして、最高の国語辞典とはどれだ?」
 初級を終了したあたりから、教師にとって国語辞典は手放せないものになってきます。しかし、日本語学習者に教えるために使いやすい辞書はなかなかみつからない。せっかく説明してあっても、逆にその説明が難解だったりして、「使えん!」と辞書を投げ出すこともしばし。
 で、いろいろな国語辞典を渡り歩いて、わたしが「これだ!」とお勧めできる国語辞典がこの例解新国語辞典。まず、語彙の説明が非常に明確でわかりやすい。しかも的確。字や見出しが大きく読みやすい。句例が多い。学習者が持つのにもいいと思います。中学生を想定して編集しているらしいんですが、1級レベルの語彙は十分網羅しています。日本語学習者にはこれくらいが最適なのではないかと思うのです。私はここしばらくずーっとこれです。
 ま、欠点がないわけではない。例えば「明らか」を引いてみましょう。
「明らか:疑いなくはっきりしている。」
で、当然「はっきり」を引いてみる。
「はっきり:他のものと区別できるほど明らかだ」
・・・をい。 とまあ、こういうことが、他の辞書に比べてちょっと多い。でも、やっぱりこれが一番!

 他にもお勧めできるのは、同じく三省堂の現代国語例解辞典(第2版)これは、擬音語、擬態語が充実しています。アクセント表記があるのもうれしい。辞書はやっぱり三省堂なんでしょうか。

 教師と学習者のための日本語文型辞典(くろしお出版)

 文型辞典の決定版とも言うべき辞典。文型にとどまらず、副詞、複合動詞も充実しているすごい本です。きっと持っていて、活用している方も多いでしょう。かくいう私も持っています。しかし、どちらかというと、私はこの本の否定派です。
 なぜかというと、これをバイブルに教えている先生が非常に多いから。「これ一冊あれば、中級は大丈夫」と豪語する人も。そういう使い方に危険な匂いを感じます。
 読みこめばわかるんですが、この辞典には学習者のレベルによっては蛇足のような使い方も説明されてるし、文型の意味説明は、日本人もよく咀嚼しないと理解できないほど難解です。おそらくこの説明を私の生徒に読み聞かせてもさっぱりピーマン(死語)でしょう。例文も豊富ですが、また、使われている語彙、状況が非常に難解なものも。
 誤解のないように言っておきますが、別に内容が悪いと言っているのではありません。内容の充実度、文法理解の切り口の斬新さは他に類を見ません。ただ、なまじ内容が充実しているだけに、教師がよく理解しないまま、「この文法の意味はこうだ!」と、教えてしまう。そういう意味で大変危険な本だと思うのです。(それは日本人の日本語教師に限りません。)つまり、使う側の心がまえの問題ですね。
 文法の解釈の仕方、意味の分け方は、あくまでも個人の理解の範疇であり、「これが正しい」という定説はあまりないものなのだから(私は、文法なんて結局、学習者がわかって使えりゃそれで十分と思っています)、自分の頭でその文型を考え、理解するための手がかりとして使うべき本だと思います。特に、これから日本語を教えようと思っている方には、授業準備にそのまま使うのではなく、あくまでも参考として、自分の知識増加のために使って欲しい本です。

 使い方のわかる類語例解辞典(小学館)

 やっぱり中級以上で日々お世話になる類語辞典。「##と**は何が違いますか?」という教師にとって最もおそろしい質問のときには手放せません。数ある類語辞典の中では、これが一番。しかし、「最高」とはいいたくない。だって、まだ内容が足りないような気がするんだもん。もっと詳しい類語辞典が出るのを待ってます♪
 とはいえ、各語彙の比較と、違いの説明、句例を使った対照などはなかなかお役立ち。特に能力試験対策の、語彙の授業の時、めちゃくちゃ使いました。また、語彙にとどまらず、「わけ」とか「もの」とか、機能語の範疇に属するものも載っており、意外なところでも役に立つ。ぜひ一冊、持っておいたほうがいい辞典です。

 副詞用例辞典(凡人社)

 今まで私が教えた学生、生徒が口をそろえて「難しい」と言うのが、副詞の意味とその使い方。教える側にとっても悩みの種。一口で説明できるもんじゃないですもんねぇ。そんなときに、大変便利なのがこの辞典。B6という小型サイズながら、内容は充実。まさに、痒いところに手が届く副詞辞典です。また、例文も豊富で、使いやすい。(副詞を教えるときは、言葉で意味を伝えるよりも、例文とその状況でわからせるほうがはやいと思う)副詞オンリーの辞書って、確か他にはなかったように思うんですが(わたしの知る限りなので、実はあるのかも)、この辞典、済南の学校にも置きたいと思って、日本の学校の校長におねだりしたんですが、品切れだか絶版だかしてて、すでに手に入らず。う〜ん、かなり残念だぞ。
 で、副詞辞典は、ないとヒジョーに困るものなので、今ピンチヒッターとして活躍しているのが中国で購入した『日語副詞例解』(天津大学出版社)。何を参考にしたかしらんが、これがかなりいいのです。日本語での説明プラス中国語訳も載っていて、さらに、例文も充実。難を言えば、掲載語が少々少ないことかしら。「ほしい!!」と思った人、中国に来てください。(笑)

 基礎日本語辞典(角川書店)

 これも、日本語教師にとってはバイブル的存在。ふと疑問に思ったときまず引いてみて、詳しい解説と例文に驚き、「なんでこんな古い例文が・・・」と、ちょっと憤り、思いもしなかった別の使い方と類義語に戸惑い、読めば読むほど頭がこんがらがって、ドツボにはまって困っちゃう辞書(笑)。そんな体験をした方もいるのでは?私はそうでした(笑)。
 しかし、「自分の頭で考える」ためのヒントは必ずくれる。本当のところ、こういった辞書こそ、私ら教師はしっかり勉強しなければならんのではないかと思うのです。ついつい、「こうだ!」と明確な答えをくれるほうになびきがちですもんね。「自分の頭で考え、咀嚼し、消化してから学習者に教える」という作業を怠らないためにも。実際問題、日々の授業に終われている身にはかなり難しいですが。
 でも、やはり日本語教師にとっては必携だと思います。

 日本語誤用例文小辞典(凡人社)

 日本語学習者の文法誤用に焦点を当てて編纂したちょっと毛色の変わった辞典。学習者の誤用作文がずらっと並び、「なぜこのような間違いが起こるか」という説明がなされ、なんとなく読んでいるだけでも勉強になります。レベルは初級から初中級くらいでしょうか。文法の説明とか、教え方とかは別に書かれていないんですが、教える際に、何に留意すればいいのか、どういう間違いが起こりやすいのか、など有効な示唆を与えてくれます。初級を教えていたときは、ずーっと手放せなかった本です。「こんなこと、学生にはすぐにわかるさ」と思った内容にも、意外な落とし穴があることに気づくことも。学習者の思考回路を知るためにも有効です。

 

まだまだすくないですが、今後少しずつ増やしているつもりです。
情報があったら、ぜひお寄せください。

じゃぱに〜ずえりあ   ほ〜むへ

 

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