黄泉(ヨミ)の扉に居た少女
参考チーム:ネスツチーム 廃棄物チーム
荒涼とした大地…

まるであの世かとさえ思えるような光景…

おおよそ人どころか動物の気配すらないその場に
古びた…何か「まじない」の施された社が建っていた。

その前に今、二人の男が居る
一人は銀色の長い髪をした白衣の男…。
ドクター鳳である。
もう一人は、その片腕と思しき科学者…。

鳳は、その社を見るとニヤリと笑みを浮かべる。

鳳「ククク…これが…
  常世と現世を封じているという『結界』…か
  だが、だいぶ不安定なようだな…シュバルツよ…」

シュバルツと呼ばれた男が答える。
シュバルツ「原因は現世の腐敗であろう…
      この世は腐りきっているのだ…
      一刻も早く愚かな人間どもに『神罰』を下すべきなのだよ鳳!」
鳳「いずれにせよ間に合う事は無いだろう…
  この結界は近い内に崩壊する…
  その後の事は、凡人どもが必死にどうにでもするだろうさ…
  その間に死んでしまうような者は所詮、無駄な人口だ…問題無い」
シュバルツ「で、ココに何をしに来たのだ…
      もう、あらかたのデータは集積し終わった筈だ…」

ニヤリと笑い、鳳が指をさす。
その方向には少女が一人横たわっている。
金色の髪をした美しい少女…。
その首には勾玉がかけられている。
しかし妙な事には、少女は死んだように動かない。

シュバルツ「この封印の要…『封印の巫女』…か?」
鳳「そう…ネスツの文献によると彼女が封印の儀についたのは幕末…
  それ以来、100年以上もの間、彼女の時は止まったままだ…」
シュバルツ「それがどうした…
      !?…まさか貴様…」

険悪な表情をするシュバルツをよそに
冷たい眼光を放ちながら鳳が言う。

鳳「そう言う事だ…遅かれ早かれ崩れる封印だ…
  それが今でも構いはしない…
  『要』を失った所で空間その物は数年は持ちこたえるだろう…
  つまり…」
シュバルツ「…つまり…なんだと言うのだ…」
鳳「この娘はネスツが有効利用する…
  それが一番の使い道だ…違うかね…シュバルツ」

シュバルツ「貴様の個人的な趣味ではないのか?
      その金色の髪が…」
シュバルツがそう言いかけた瞬間、
喉元に鳳の手刀が突き立てられる。
鳳の顔には笑顔が無い。

鳳「貴様は俺の部下だ…
  無粋な言葉を吐くな…死にたくなければな…」

鳳がゆっくりと手刀を退く。
シュバルツの額には汗が流れる。

シュバルツ「良いだろう…だが覚悟しておくが良い…
      いずれ貴様には神罰が下る…」

再び不敵な笑顔で鳳が言う。

鳳「いずれ俺自身が神となってやるさ…ククク…
  フフ…ファハハハ!!!!」

場所は変わって鳳の研究室
研究室とは言っても鳳専用の個室であり
しかも広さ設備から既に彼の住居と言って良い。

鳳「さあ、目覚めるんだ封印の巫女…」

横たわっている少女の顔に手を当てる。
すると少女は一瞬にして目を開き飛び起き、
目の前に居た鳳に攻撃をしかけた。

鳳「ほう…」
何事も無かったようにアッサリと交わす鳳。
その動作のまま、流れるように少女を押さえつける。

少女「あぐ!!」
鳳「素晴らしい反射だったよマドモアゼル…
  そうだな…オマエには俺の専属のサイボーグとなって頂こうか…」

押さえつけられたまま少女が答える
少女「ココは…いいえ…私は…!?」
鳳「おや?自分の事を何も覚えてないのかい?
  それはまた丁度良いな…」

鳳の顔つきが変わっていく
少女の金色の髪に触れながら尚も話しつづける。

鳳「綺麗な髪だね…まるで、凰のようだ…
  ところで君は『兄弟』というものについてどう思うかな…?」

『兄弟』という言葉に少女は少し反応する。

鳳「僕には最愛の妹が居たんだ…かけがえの無い妹が…ね
  でも、僕を残して居なくなってしまった…
  僕にはもう、この世に欲しいものなんて何も無いんだよ…
  ねえ、君が僕の立場だったら何を欲しいと思う?」

少女は何も言わずに鳳の言葉を聞いている。

鳳「こういう気持ちを…
  君なら言わずとも判ってくれると思うんだ…
  君がもし…僕に手を差し伸べてくれるのなら…
  僕の傍で彼女の代わりになってよ?
  
  おんなじ気持ちで君のことを愛せる気がするんだ…
  君がまるで…あの日の彼女に見えるまで…」

少女は彼を受け入れた。
それは、この哀れな男に同情しただけなのかもしれない。
しかし少女は彼に自分と酷く似た物があるように感じていた。

鳳「君の名前は…どの文献にも残っていなかった…
  そうだ…君は常世の入口を守っていたから…
   …『黄泉(ヨミ)』にしよう…」

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