LUCIFER-UNTOLD TALES-
参考ネタ:セラフィムチーム ルシファー サタン セラ
by堕天使さん

夢と努力があれば、なんでも成せると思った。
思いがあれば、遂げられぬものなどないと信じていた。
あの時私は──いや、僕は、若かった。

「父さん、父さん!」
 とても無邪気な声。それを聞き、彼はゆっくりと振り向いた。
 長身で、がっしりとした体格は、少年にとっては山よりも大きく感じた。
「どうしたんだ、レオン」
 彼は少年の目線に合わせるようにしゃがみこむと、
 優しい笑顔でそれに応えた。
「あのね、やっと炎が出せるようになったんだよ!」
 興奮を抑えきれず少年は口早にそう叫ぶと、パッと飛びのいて、
 背中に差してある朱塗りの木刀を手に取った。
 そしてそれを振りかぶり、深呼吸するようにゆっくりと息を整える。
 しばしの沈黙。そして、
「やあっ!」
 少年の気合の叫びとともに振りかざされた木刀の軌跡を描くように、
 空中に赤い炎が発生した。
「おお、よくできたな、レオン。
 これなら、あと1,2年で守護者に相応しい力を身に付けられるな」
 そう言って、彼は大きく笑った。
 少年も、少し気恥ずかしそうに笑っていた。

 ドゴォォォォォォォォォン
 その音が少年の耳に届いたのは、既に日が落ちた頃だった。
 いつものように、一日の訓練の詰めをしていたところだ。
 答えがわかっていたわけじゃない。ただ、嫌な予感がしたのだ。
 その悪寒に従うように、少年は音のした方へ駆け出した。

 その1,2分後、少年が見た物は、想像を絶する光景だった。
「親父ぃぃぃぃぃぃぃっ!!!!」
 少年は、喉がつぶれるのもかまわず叫んだ。
 燃え盛る木々、幾つも穿たれた地面、立ち尽くす黒い影、
 広がる血溜まり、そして、倒れ伏した父親。
「おおっと、やっぱり来たのか。ま、予想通りってことだな」
 影が、しゃべった。炎の逆光でよくわからなかったが、
 影はがっしりとした体格の男だった。
 ズボン以外には何も着ておらず、胸に刻まれた十字架の傷と、
 携えた刃は、黒ずんだ液体で濡れていた。血だ。
「うああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 本能的に、体が動いた。手にしていた木刀を振りかざし、
 男に向かって飛び込んだ。
「ほう、勇ましいな。だが・・・」
 すかさず、男の手にしていた刃がひらめいた。
 次の瞬間、少年が見たものは、キレイに斬られた木刀と、
 舞い散る血飛沫だった。
 少年の血だった。
 少年の胸が、木刀ごと一文字に斬られていたのだ。
「自分の力量をよく考えたほうがいい。今のお前の行動は、無謀そのものだ」
 男の言葉が終わるのとほぼ同時に、少年の体は大地に横たわった。
「くっくっ、今は生かしておいてやる。5年もしたら、相手をしてやる」
 少年の意識は、そこで途切れた。

 次に少年が目を覚ました時には、男の姿はなかった。
 だが、それ以外は何も変わらない。彼の胸の傷も、彼の父親の死も。
「お・・や・・・じ・・・」
 少年は、力なく立ち上がり、ふらふらと冷たい骸に歩み寄る。
 が、胸の傷の痛みに、再び膝をついてしまう。
「親父ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!!!!!」
 少年は、叫んだ。今の彼にできることは、それだけだった。
 その時から、少年は変わった。
 何よりも、力を求めるようになった。どんな犠牲を払ってでも、力を。

 少年が力の覚醒方法を知り、
 その者「セラフィム」と対をなす名「ルシファー」を名乗り始めたのは、
 それから数年後の事だった。
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