キムとベダル
参考ネタ:カン・ベダル
原案:小林万希さん

それはキムが15歳の時の事。

キムはその日、夕食の食材を買い出しに街に出ていた。

(今日は僕の好きな焼き肉だって。楽しみだな♪)

そんな事を考えながら歩いていると、突然後ろから

「待てーーーーーーっ!!このガキーーー!!」

という声が聞こえてきた。

声のする方を振り向くと、そこには食べ物やら何やらを両手に抱え、
こちらに向かって走ってくる少年の姿があった。
年の頃は10歳くらいだろうか。
少年に気づいたキムは身をかわそうとしたが、
少年の走ってくるスピードはキムの予測を上回っていた。

ドスン!

キムは走ってきた少年をよけきれずに少年にぶつかり、
二人ともその場に倒れ込んでしまった。

「いたたた…」

腰をしたたかに打ち、その場から立ち上がれないキム。
少年はこぼれ落ちた物を手早く拾い集めると、キムの方を睨み付けて

「どこに目を付けてんだ、バカ!」

と言い放ち、走り去っていった。

その場に座り込んでいるキムに、少年を追ってきたらしい男が声をかける。

「おい、大丈夫か?ケガはないか?」

その声に、キムは身体のホコリを払いつつ立ち上がる。

「あっ、はい…大丈夫です」
「まったく、あのガキにも困ったもんだ」
「どうかしたんですか?あの子…」
「あいつはここらでもちょっとばかり名の知れた悪ガキでな、
 いつも店の物を盗んでいきやがるんだ。
 聞いた所じゃあいつはみなし子で、ああやって生活してるらしいんだが」
「そうなんですか…」
「それにあいつ、すっごい逃げ足が速いんだよ。
 まあ、今度見つけたら絶対とっ捕まえてやるけどさ。それじゃあな」

そこまで言うと、男はもと来た道を引き返していった。
キムはその場に立ったまま、少年の走り去っていった方向を見つめていた。

(そういえば、あの子…)

先ほど、自分を睨み付けた姿が頭をよぎる。

(なんか獣のようだったな…たとえるなら『虎の子供』って所か)

しばらく物思いにふけっていたが、やがて我に返る。

「そうだ、こんな事考えてるヒマはないな。早く用事を済ませなきゃ」

キムはそうつぶやくと、用事を済ませるべく歩き出した。
その後もキムは何度か街を訪れたが、
二度とその少年の姿を見る事はなかった。
聞いた所では近所の有名なテコンドー師範に引き取られたという。
キムはその事について、
「身寄りが出来てよかったですね、あの子」と語っていたという。

…その少年こそ、ベダルであった。
彼が後に宿敵として自分の前に立ちはだかる事を、
キムはまだ知る由もなかった…。

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