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参考ネタ:封印の書チーム AGSチーム
原案:ハルベルトさん 「雨、か……」 駿はそう呟いて雨戸を打つ水の音に耳を傾けた。 「……乱れるな」 また呟く。軽い苛立ちと共にもう一度彼は木刀を振った。 「くっ……!」 空拳で居合の型を取る。 「……虫の知らせだとでも言うのか?」 予感というものは確かに在る、と、彼は思っている。 「自惚れとは思いたくない。その程度の自負はな……」 駿のプライドである。 「誰だ?」 反射的に彼は二人の同居人や幼馴染の顔を思い浮かべた。 「入れ…」 戸は外側から開かれた。 「……?」 そこから現れた顔が 「お邪魔するよ」 青年はそれには答えずに一歩玄関に足を踏み入れた。 「あんた……ここに何の用だ?」 もう一度問う。今度は青年は答えた。 「急に雨に降られてね」 駿は手で入れ、と合図を出しながら青年に背を向けた。 「あんた…どこかで見た顔だな……」 青年の顔を見ずにそう言う。背中で青年が笑みを浮かべたのがわかった。 「思い出した……KOFだ」 ようやく心当たりに辿り着く。 「去年のKOFに参加していた……二階堂紅丸の親戚だろう?」 二階堂、という名前にピクッと青年の方が揺れる。 「名前は…確か……」 道場の中央まで来たところで振り返る。 「エミール…左寺」 左寺は軽く肩をすくめると、道場の壁に背をもたせた。 「君は三剣君だね。『三剣駿』……」 彼は懐から紙切れのようなものを取り出し、読み上げはじめた。 「格闘スタイルは三剣流剣術・居合の型。7月20日生まれ。 クスッと笑い、左寺は紙切れを裏返した。 「…去年の大会の選手プロフィールだよ」 駿はまだ警戒心を解かない。 「三剣流という流派は、君が思っている以上に有名でね。 パチン! と掌で稲妻がはじける。 「あんた…まさか……」 三剣流、そして特異な能力者。こうして二つ並べれば、 「僕は左寺。エミール左寺。君と同じ、現代の悪魔さ」 悪魔。 「やはりな……」 その力ゆえに自分が両親を殺した。 「で、その俺と同じ悪魔が何の用だ?」 穏やかな用件ではなかろうがな、と、付け加える。 「雨宿り、と言って信じてはもらえないのかな」 冗談のつもりなのか、左寺の返答はそんなものだった。 「あんたが俺なら、それを信じのるか?」 軽く受け答えて、左寺は壁から背中を離した。 「出場するんだろう? 今回のKOF」 一歩ずつ、ゆっくりと駿に近づく。 「君は感じないかい?」 雨の音が語尾を濁らせる。 「それとも、僕の中にヒトでないものがいるから、 カツン、と、足音が一つだけ高く響いた。鼓膜に直接触れたような振動。 「何の話だと言っている」 音が消える。自分の隣に回り込んでくる銀色の影をさえぎらず、 「君が気付いていないはずはないだろう?」 ピク、と指先が震える。 「今、ヒトという種が未来を見ている」 それは断定。 「ヒトという種が予感している。ヒトの黄昏を……」 ククク、と押し殺した笑い。 「あるいは、輝かしい未来をね」 それがこの数日感じていた予感。 「俺の知ったことじゃないな……」 と、駿は左寺の指をその稲光ごと押しやった。 「俺はあいつらを守りたいだけだ。 ニヤ、と左寺の目が笑った。 「そう、それは正しい人の生き方だ」 皮肉でも嫌味でもない。彼は頷き、駿に背を向けて数歩後に下がった。 「……だが、力は別だ。そうだろう? 三剣君」 背中が揺らめく。照明の加減のせいだろうか? 駿にはそう見えた。 「消え…た?」 左寺という物体。彼の目に映ったのはそれだけだった。 『抜・け・出・し・た というのか!?』 駿がその光景から受けたインパクトを端的に表すとそんな台詞になる。 『……ッ! 抜け殻から、プレッシャーだと!?』 そして駿はこの抜け殻を操る何かに気付く。 『体がうずくというのか!?』 戦士の本能。 『いや……違う……これは……』 力。三剣の三本目の剣。『禁呪』。 「貴様がAGSだと!?」 駿は一瞬で間合いを取り、居合の構えに入った。 「今の所、僕は君の敵ではないよ。これはマルスの心。 駿は構えを解き、無言で先を促した。 それが君の敵だ、と左寺は付け加えた。 「あんたに協力しろというのか?」 中性的な笑みを浮かべ、左寺はのどの奥で小さく笑った。 「僕には君が必要なんだ」 ゾッとするほど妖しい声色。これが男の出す声だろうか? 「やめろ……吐き気がする」 そんな駿の反応を見て笑わずに入られないのが左寺という男だった。 「チッ…」 駿としては呆れるしかなかった。 「三剣君、君の力は危険だ」 断言する。 「だがそれは彼女と戦うためのもの、だろう?」 手を組め。そう言ったつもりだ。 「いいだろう…」 軽く頷く。 「君のそういう律儀さは、好意に値するよ」 今後の予定の説明を促す。左寺は頷いて口を開いた。 「エリスが次に動くのはKOFだ。ネスツ…… 懐から取り出した書類を床に置く。 「こいつもどこかで見たな……」 小さく呟きながらちらりと目を通す。詳細は後で確認すればいいことだ。 「……ヒトの予感と言っていたな」 顔を上げて左寺を見る。 「俺にはAGSがその予感の源とは思えない。理由はないが…」 沈黙。雨の音が久しぶりに耳に入った。 「……出来ることをやるだけ…か」 駿はそう結論を下した。 「君らしいよ」 左寺はまたにやりと笑った。 「じゃあ、僕はこれで」 立ち上がり、玄関へ向かう。 「雨宿りはいいのか?」 からかうように駿が後ろから声をかける。 「雨は好きなんだよ」 頭を掻きつつ、左寺はそう返した。 「妙な奴だな…」 駿はそう呟いた。 「左寺と言ったな」 駿は手にとっていた資料を床に置いた。 「あんたは俺の力を危険といったが…… 左寺の動きが止まる。駿はその背中をじっと見据えて先を続けた。 「あんたは自分でそうとわかっていながら、 駿の見た左寺とは、そういう男だった。 「危ういんだよ……人として……」 ゆっくりと、顔だけ左寺は振り向いた。 「忠告、受け取っておくよ」 小さく音を立てて戸が閉まる。 「……予感、か……」 その答えは、決して遠くない。 |
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