初詣in堕天使's world
参考ネタ:河神財閥チーム 新河神財閥チーム セラフィムチーム エターナルズ
by堕天使さん

「わあ〜、人がいっぱい〜」

 人目をはばかることなく、芽美は陽気な声を上げる。
 元来お祭り――に限らず、人が多くて騒がしく楽しいところ――好きな
 芽美は、テンションが上がっているのか、嬉しそうに跳ね回っている。

「ちょっ、ちょっと芽美さん、そんなに急がなくても・・・!
 あ、ちょっと待って!」

 毎度の如く芽美の活発さに振り回されながら、慌てて芽美の後を追う。

「芽美お姉様と光一お兄様、元気そうですよね・・・」

「あの二人は、あれが普通なんだろ」

 どこか困惑したような表情の旭に対し、了はいたって平静だ。
 と言っても、その実あまり気にしてなかったりする。

「こんな夜遅くまで起きてて、何であんなに元気なのよ」

 それとはほぼ対照的に、後ろの方で頭を抱えているのは日羽である。
 元々日羽は、人がいない所が好きなのだ。静かだし、落ち着ける。
 何より、日羽の過去からいけばそういう状況を好むのも無理はない。

「ま、いいだろ。元気ってことは、若いってことだよ」

 年寄りくさいことを呟く了。今日は心なしかいつもよりぼんやりしている。

「おいおい、な〜にいつまでもつっ立てるんだよ」

「そうよ、早く初詣済ましちゃいましょうよ」

 人ごみの向こう、その先から、先に行った筈の竜一たちが歩いてきた。

「あれ、竜一様に美里様」

「どうしたんだ?」

「いや、それがよ・・・」

 少々返答に困ってこめかみの辺りをポリポリと掻いていると、
 後ろの方からこれまた晴れ着姿の後月と巫薙が顔を出した。

「前にマスターが言ったじゃないですか。
 「こういうのは皆で行った方が楽しい」って」

「だからあたいたち、兄様たちを迎えにきたんだよ」

 どこか困ったような、それでも嬉しそうな微笑を浮かべ、
 日羽は了へと顔を向ける。
 了もそれを微笑で返し、竜一たちの方へ歩いていった。

「そうだな、行こうか」

「あの、了お兄様、その前に・・・」

 と、旭は少々困惑した顔ではるか向こうで騒いでいる
 芽美と光一を指差した。

「そうね、取り敢えずはあの二人を連れ戻さないと・・・」

「やれやれ・・・」

「ねえ、なんか向こうの方が騒がしくない?」

「さあ、気のせいじゃないの?」

 それでも騒ぎの方が気になるのか、
 蛍子は後ろ髪が実際に引かれているかのような思いで
 万里絵たちのあとをついていった。

「それにしても、今年は豪い人の数ですね・・・」

「世間一般では、
 「新世紀」などというくだらない事が騒がれていましたからね・・・」

 なにやら騒ぎの中心に若い男女の声が聞こえたような気もしたが、
 万里絵は特に気にもしない様子で呟いた。
 それに帰ってくるつまらなさそうな口調の葛葉の言葉。

「・・・相変わらず冷めてますね、葛葉さん・・・」

「ほら、三人とも、早く行くよ。この様子だと、
 すぐに人でいっぱいになるよ」

 やや前を行く雅人は、人ごみに押し出されそうになりながらも
 ようやっと声を掛ける。

 万里絵と葛葉は溜め息一つ、いまだ野次馬根性全開で
 騒ぎを見にいこうとしている蛍子の腕を互いに脇で固め、
 轢きづりながら歩き始めた。

「ふう、やっと着いた・・・」

 賽銭箱の前まで来て、明はほっとした吐息を漏らす。

「予想以上に遅くなっちゃったね。
 早くお参りしてお兄ちゃんたちに追いつかないと・・・」

 そう言い、光はお賽銭を賽銭箱に投げ込んで
 勢い良くパンッ、と手を合わせた。
 晴れ着の裾がその動きを追うように中に舞う。

(今年も、いっぱいい〜〜っぱい楽しい事がありますように!)

 まるで絶叫でもするかのように、光は願い事をした。その横では明が、

(今年こそ、今年こそ平穏な生活が出来ますように!)

 と、ひたすら真剣な顔で、どちらかといえば祈るように
 心の叫びを繰り返していた。

 しばらくして、満足したのか明は顔を上げた。

「ふう・・・」

 自然と、溜め息が出た。その瞬間、

「終わった?明君!」

 すぐさま光が抱きついてきた。どこか柔らかい、光の髪の匂いを感じる。

「明、終わった?」

 やや遅れて、少しだぶついた晴れ着姿のチビが顔を出した。

「あ、チビちゃん、やっぱり来てたんだ」

「博士が、行け、っていってた」

 感情のこもらぬ声で、チビは答える。
 最近は精神面も成長したチビだが、
 どうも明以外の人間とのコミュニケーションは相も変わらず苦手なようだ。

「おっと、そうだ。チビもなんか願い事していけば?」

「願い・・・事?」

 不思議そうに、その単語を繰り返す。
 おそらく、チビが聞いたことのない単語なのだろう。

「なんて言えばいいかな?
 自分が今望んでいる事を、こうやって神様にお願いするんだよ。
 そうすれば必ず叶う、っていう保証はどこにもないけど、
 まあ、験担ぎみたいなものだよ」

「・・・解った」

 じっくりと明が話してくれた内容を反芻し、呟いた。
 周りの人がそうしているように手を合わせ、

「ずっと明といたい」

 と声に出して言った。思わずギョッとした感じで明と光はチビを見返す。
 いくらあまり常識を知らないとは思っていても、
 まさかいきなりこんな行動に出るとは思ってもいなかったようである。

「ちょっ、ちょっとチビちゃん!早く、こっち来て!」

 と、焦りに焦って光はチビの手を引っ張って退散していった。
 すぐに明も後を追う。

「暇を潰して日本に来たっていうのに・・・」

 溢れ返る人ごみを掻き分けながら、ミリィはひたすらにぼやく。
 それは、クロフやレグも同じだった。

「なあ、レグ。わざわざ日本まで来る必要、あったのか?」

 息も絶え絶えな感じで、クロフはその溜まりに溜まった疑問を
 レグに投げつける。

「あるでござるよ。今時このような由緒正しき社など、
 日本にしかないでござるからな」

 レグはややいっぱい汗をかきながら、それに答える。
 いささかクロフよりも元気に見えた。

「セラフィム、大丈夫?」

 と、ミリィは傍らではあはあと息をしているセラフィムに向き直った。

「うん、大丈夫だよ。こんなに人が多い場所って、初めてだから」

 元々大自然の中で育ったセラフィムにとって、
 この人の波はかなり堪えるだろう。

「なんなら、そこの草むらとかで休むか?」

 参拝用に敷き詰められた路から外れた草むらを指差し、
 レオンはセラフィムに訊いた。
 セラフィムは笑みを浮かべながら首を横に振り、兄の顔を見つめた。

「大丈夫、兄さん。私、兄さんの妹だもん。
 こんな事で、挫けてなんかいられないよ」

「セラフィム・・・」

 レオンの涙腺が、不意に緩んだ。

 憎しみの力に突き動かされたとはいえ、自分は妹を殺そうとしたのだ。
 しかし、セラフィムは許してくれた。
 それだけではなくこの汚れた手をとり、心からの笑顔で迎えてくれたのだ。
 生まれて始めての、すれ違いばかりだった兄妹が触れ合った瞬間。
 それは、レオンとセラフィムの心に永遠に残るだろう。

 レオンは思う。セラフィムという名は、
 まさにこの汚れ無き妹に付けられるべき名前なのだろうと。

「さて、そろそろ行くか?」

「はい」

 互いに微笑み合い、兄妹は人ごみを再び掻き分け始めた。

「ホント、あの兄ちゃんが一緒だと、
 セラフィムちゃんに声掛けずらいったらありゃしねえぜ」

「ま、いいんじゃないの?あの二人はあれで」

「そうでござるよ。
 今までつらい経験ばっかりでござったからな、あの二人は」

「その分を取り戻すみたいに、仲良くしてもらったほうが、私は嬉しいわよ」

 そう言って、ミリィとレグはセラフィムとレオンの後を追った。

「・・・ま、しょうがねえか・・・」

 クロフもそう呟き、急いで四人を追いかけた。

 額の汗を拭いつつ、蛍子はピョンピョンと飛びながら、
 およそ10メートルは離れた賽銭箱を眺めていた。
 人は、どこからこれだけの量が溢れ出してきているのかは解らないが、
 一向に途切れる気配はない。

「ここからでも十分でしょ?別にわざわざ近くまで行く事ないわ」

 そう言って、万里絵はお賽銭を一個一個投げていく。
 それらは全て同じ軌道を描き、正確に賽銭箱の中央へと投げ込まれた。

「わあ〜、凄い〜」

 感嘆の声を上げ、蛍子がぱちぱちと両手を叩き合わせる。

「感心してないで、あなた達もやりなさい。時間がもったいないでしょ?」

 手を合わせたまま、万里絵は蛍子の方を一瞥した。

 一歩、葛葉と雅人はとっくのとうに賽銭を投げ入れていた。

 渋々、蛍子は財布から小銭をいくつか取り出し、賽銭箱に投げ入れる。
 それから、手を合わせた。

(今年も、ますます私の美しさと強さに磨きがかかりますように。
 また、今年もあのような素晴らしい格闘家たちと戦えますように)

(え〜っと、今年はいっぱい麻雀友達が出来ますように!)

(さらに演奏が上達できるよう、まあ見守っててほしいわ。
 誰かの応援があるっていうのは励みになるから)

(全国優勝!これに限る。あ、あと、先輩と・・・その・・・)

 それから約3分後、万里江たちは引き上げる事にした。途中、

「?」

 と、不思議そうな表情を浮かべて雅人は人ごみへと視線を投げかけた。

「どうしたの、雅人くん?」

 それに気づいたのか、蛍子が雅人に問い掛ける。

「ん?あ、いや、今そこで
 エターナルズの人たちを見たような気がしてね・・・」

「今の時間帯はそう珍しくないでしょ?
 他のKOFの参加者も来ているに違いありませんし」

「あ、私もさっき帝学に人たち見たよ!」

 無駄に明るい蛍子の声。
 それは別にどうでもよかったのか、
 雅人は納得したかのように再び歩を進めた。

「もう〜、いい加減機嫌直してよ〜、姉様〜」

 璃瑠に腕を捕まれたままの菜々は、不機嫌そのものの表情を浮かべていた。

「機嫌ならもう直ってるよ」

 そういうが、不機嫌そうなその口調は変わらない。

「まったく、何が不満なんだか・・・」

「お前だ!」

 すかさずに悠樹に吼える菜々。
 しかし、悠樹は両手を天に掲げ、余裕の笑みを浮かべた。

「おお、恐っ。あんまんり怒ると、長生きできないよ」

「うるさい!」

「そこまでよ、二人とも」

 それを見かねたのか、はたまた周囲の目かどうかはしらないが、
 婁那が止めに入る。

「そんなに嫌なら、早く済ませましょう。いいでしょ?」

「ふん、勝手にしろぃ!」

 ひとまず吼えて、菜々は手を合わせる。

 それに続き、璃瑠たちも手を合わせた。

(今年は、凄腕のバイカーに出会えるようにしてくれ。あと、)

 と、菜々は視線を悠樹へ向けた。
 そのまま、一語一語区切るように心中で絶叫した。

(こいつをなんとかしてくれ!)

(私たちの曲で、皆が笑顔になってくれたら良いな。
 あ、それと、少しはお姉ちゃんをおしとやかに・・・無理かな?)

(あれほどの大事件に出会っても、生き残れた事を感謝いたします。
 これからも、私たちのことを見守りつづけてください)

(特にはないな・・・。あえて言うんなら、バンドの事かな?
 今年はいろんなのが出てきたけど、負けないように見守っててくれよ)

「さ、もう皆済ませたわね。じゃあ、そろそろ初日の出でも見に行くわよ」

「さんせ〜い」

 璃瑠が元気よく手を上げる。
 その後で、悠樹はこっそりと菜々に近づいて耳打ちした。

「ねえ、何お願いした?もしかして、俺の事?」

 ブチッ

 それに近い音を立てて、菜々の顔は紅潮した。
 すかさず、晴れ着の裾から携帯のヨーヨーを取り出した。

「今度という今度は許さない!潰す!」

 叫ぶと同時にヨーヨーを振るう。
 悠樹はそれをさっと避わすと、
 行き場をなくしたヨーヨーは小さい女の子の後頭部に直撃した。

『あ!』

 菜々や悠樹だけに限らず、婁那や璃瑠までも声を上げた。

 女の子はとりあえず倒れはしなかったが、あまり無事とは思えない。

「あ、あの、大丈夫?」

 おどおどとした様子で問い掛ける悠樹。

 女の子は、それの返事の代わりに右手を上げ、
 左手でそれをスポッと外した。
 外された部分からは、なぜか銃口が見えたりもした。

 ドゴーーーーン!

「ん?なんだ、今の音は?」

「どう聞いても、爆発にしか聞こえなかったよな・・・」

「拙者もでござる・・・」

 なにやら冷や汗を垂らしつつ、自分達が今さっきまでいた場所を見やった。
 そこでは、何が起こったのかはわからないが、
 濛々と煙が上がっているのが見えた。

「・・・無視しましょう。関わるとまたろくでもないことになりそう・・・」

 そう言って、ミリィは歩を再開する。

「あ、ねえ、兄さんは何をお願いしたの?」

「ん、僕か?僕は・・・セラフィムと、ずっとこんな風にいたい、かな?」

 それを聞き、セラフィムはまた微笑んだ。
 といっても、さっきから微笑みっぱなしだが。

「私も、兄さんと同じだよ」

「あ、俺も同じなんだゲフッ!」

「・・・私もよ、セラフィム」

 とりあえず邪な気を一瞬漲らせたクロフを拳で黙らせ、ミリィは微笑んだ。
 しかしその足は上下に動いており、その下にはクロフがいる。

「拙者も、まあ大体同じでござるな」

「ふふ、皆同じなんだ」

 ひとつひとつ、セラフィムは微笑みの内容を変えていく。
 その様子が、ひどく愛らしい。

「さて、そろそろ初日の出でも見に行くか」

「うん」

「やっと着いたよ〜」

「あの、芽美さん、周りの人のことも少しは考えて・・・」

 と、何とか芽美をなだめようとする光一。その瞬間、

 ドゴーーーーン

 という音が響いた。しばらく眼を点にしていると、

「ま、最近は色々いるからね」

 の一言で日羽は済ませることにした。そして、手を合わせる。
 了たちも、それに続き手を合わせた。

「ねえ、なんてお願いしたの」

 了が目を開けると、隣りにいる日羽は小声で話しかけてきた。

「そんな変わったことじゃないよ。このまま、皆でいられるように。
 あとは、お前の事だよ」

 とたん、日羽の頬が微かに赤く染まった。

「な、何ばかな事考えてるのよ・・・」

「で、お前は?」

 決して動じない了。
 日羽は少し口の中をもごもごさせると、決心したかのように口を開く。

「あなたの・・・ことよ」

 それだけで、日羽は顔から火が出そうになった。

 数年前にやっと、女としての人生を了に感じた日羽にとっては、
 それは何よりも恥ずかしい事であった。

 それを誤魔化すために、日羽は妹である旭の方を向く。
 旭は元々信仰深く、真剣に祈っている。

(お父様、お母様、お兄様方、
 いつも私たちを見守ってくれてありがとうございます。
 あなた方が見守ってくれていただいたおかげで、
 舘槻や機械化帝国との戦い、
 そして、今度のKOFでも皆が生き残る事が出来ました)

(とにかく強え奴と闘いたい。それだけだ)

(今年も、このはちゃめちゃが続くのですね?
 でも、誰一人欠けることのないことを祈っています)

(えっと、お従兄ちゃんや皆、あと、光一くん!といつまでも
 このままでいられますように。
 あと、ことしこそはお従兄ちゃんに
 置いてきぼりを食らわないようにして下さい)

(僕は・・・皆が無事ならそれでいいです。
 それ以外には、望むことはあまりありません。
 ただ一つあるとすれば・・・)

 と、光一はちらりと芽美のほうを見た。

(芽美さんともっと仲良くなれますように・・・)

 頬の辺りがあったかくなってくるのを、自分でも感じた。

(今年も、今までのようにいろいろありました。
 しかし、私達はいつまでも、あなたの御大な御名を忘れぬよう、
 せいいっぱい尽くすつもりです。これからも、私達を御守りください)

(悪党撲滅!うん、それだけだよ、あたいは)

「さて、皆終わったかな?」

 タイミングを見計らい、了は皆を見回した。
 ふと、旭だけがいまだに瞳を閉じている事に気付く。

「あの、旭ちゃん?」

 しかし、芽美の声も届いていないのか、旭は黙々と祈りつづけていた。

 やがて、旭が顔を上げたのは、きっかり10分後だった。

「今度こそ、終わったな?じゃ、皆で初日の出でも見に行こうか」

「うん、行こう行こう!」

「あ、芽美さん、待ってよ〜」

 すぐさま駆け出す芽美。
 それにロープでもつけられているかのように、
 光一はよろめきながら後を追った。
 了たちは、ゆっくりと歩いていくことにした。

今年は、彼らにとってどんな年であるのだろうか・・・。

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