Triangle
001
三人いつも一緒だった。
牧野遊月(女子二十番)はいつものように屋上で弁当を広げる。
そこへ綿貫陸(男子二十三番)と久遠泉(男子六番)がやってきた。
そして何のためらいもなく2人は遊月の隣に座る。
遊月は陸と泉が大好きだった。
この場所が楽だった。
-三人でいつまでいれるだろう。
ずっと思い続けてきた。
「なぁ、遊月。俺のためにも弁当作って!なーんて。」
と泉。
「何言ってんだよ!泉。」
と陸。
遊月はうなづいた。
「いいよ。1個作るも2個作るも3個作るもかわんないし。陸も作ってあげる。」
「え?ほんとに?」
陸はすごくうれしそうに笑った。
002
陸は遊月に片思いしていた。
泉は見透かしているようだ。
でも陸は知っていた。
遊月は泉が好きなことを・・・。
だけど泉は遊月のことをどう思っているかは陸にはわからなかった。
泉は陸と遊月を協力してくれているようではある。
陸と泉は長い間の親友だがよく考えれば泉のことを何も知らない。
なのに泉は陸のことを見透かしているようだった。
そして陸は泉に思い切って話してみた。
「泉は遊月のことどう思ってるの?俺、遊月に告白しようと思う。だめかな?」
しかし泉は黙ってうなづいて。
「お前のやりたいようにしたらいいじゃん。お似合いだと思うよ。」
一番聞きたい部分は聞けなかった。
-泉、お前は遊月が好きなの?どう思ってるの?
003
遊月は泉のためにお弁当を作り続けていた。
陸はおまけなんていえない。
だけど陸も泉も食べてくれた。
-このままじゃだめかな・・・。あたしが泉を好きっていえば泉はなんて答えるの?
遊月は弁当に愛をこめていたが泉には伝わっているのだろうか。
泉は礼はいうがとくになにもいってはこない。
おそらく泉はこのキモチには気づいていないと遊月は思っていた。
そんなある日遊月は陸に呼び出された。
「話があるんだ。」
と陸。
遊月は逃げ出したかった。
おそらく陸の話は予想がつく。
「な、なに?」
と遊月。
「いつもうまい弁当ありがとう。」
「どういたしまして。」
遊月はうまく話をそらせないかと考えた。しかし。
「俺、遊月のことずっと前から好きだったんだ。」
-やっぱり!
と遊月は思った。
「でもあたしは・・・。」
「遊月は泉のことがすきだって知ってる。ごめん、気づいてた。」
と陸は続けた。
「それでも俺は構わない。泉のことをみながらでも・・・。俺とつきあってほしいんだけど、だめか?」
断ることはできなかった。
004
「おめでとう。」
と泉は祝福してくれた。
それが陸にも遊月にもたまらなくつらかった。
おそらく泉は気づいていただろう。
だけど泉は2人を祝福してくれた。
遊月にも陸にも決して答えることがなかった泉の思い。
2人にはわからなかった。
「あ、俺明日から弁当いいよ。陸のためだけに作ってやって。」
遊月は聞きたくない言葉だった。
遊月は泉に作ってあげている弁当を陸のために作るなんて。
-できっこないよ・・・泉、あたしのきもちはいつだって泉を向いているんだよ。
「わかった・・・」
遊月はそれでも陸のためだけに弁当を作ることに同意していた。
005
陸と遊月がつきあいだすと泉は2人に声をかけることが少なくなった。
藤代優吾(男子十八番)たちと話をしている。
「遊月と綿貫、つきあってるのか?」
と優吾。
優吾たちは陸とはいうほど仲良くはないが遊月とは仲良かった。
「ああ・・・」
泉は2人のようすを遠い目で見つめる。
「寂しいだろ?」
と羽島響(男子十六番)。
「ま、娘を嫁にやる親父みたいな感じかな。」
と泉。
「ははっ。」
響も優吾も笑った。
だけど正直泉もつらかった。
今まで三人でいることが多いのに突然2人が付き合いだすと2人に踏み込めない。
おひとよしな自分が死ぬほど嫌いだった。
決して優吾たちがいやではなかったが陸といるほうが楽だった。
だけど2人のそばにいると気を使ってしまう。
泉もまた苦しんでいた。
006
陸と遊月は2人でいても会話は続かない。
明るいだけがとりえの遊月もうまく会話ができなくて沈黙が続いた。
陸は泉によりかかっている部分があったので遊月と2人だけで話すことは苦手だった。
「陸はあたしのどんなとこが好きなの?」
と遊月。
「えーと思いやりがあって明るくてさばさばしてて、いろいろな部分・・・かな。」
と陸。
「そっかなぁ。あたしは陸にそんな部分見せれるかわかんないよ?」
「いいよ。」
2人の会話は続かず重いものだった。
陸も遊月も泉のありがたみをひどく感じた。
そして遊月は泉への思いをふくらませていった。
007
三人のバランスは崩れたままだった。
相変わらずうまく会話ができない陸と遊月。
そして2人から離れたままの泉。
今までの屋上は会話がない2人だけの孤独の場所。
そして遊月が最悪なる事実をつげた。
「あたしたち泉がいないとだめだね。」
陸の心はずたずたに切り裂かれた。
だけどあたっていて何も返すことができなかった。
008
泉は突然遊月に呼び出された。
-遊月、陸とうまくいってないのかな?
泉にとって2人はわからないことだらけであせっていた。
しかし話はそんな泉の心をえぐるような衝撃の思いだった。
「あたしね、泉のことが好きなんだ。お弁当も泉に食べてほしかったんだよ。」
泉は遊月の思いを心の奥ではうすうす感じていた。
そしてそんな遊月の思いから逃げ続けていた。
泉は答えた。
「俺は遊月にそんなつもりで弁当頼んだわけじゃない。わかると思うけど俺は陸に作ってやってほしい。
あいつそんな一言もいえないから俺が言っただけ。俺はお前に恋愛感情はない。ごめん。」
これが精一杯の答えだった。
遊月は泣いていたようにも思えたが泉の角度からは見えなかった。
いやむしろ見るのがつらくて目をそらしただけかもしれない。
009
遊月は正直に陸に泉への思いと告白を伝えた。
「あたし泉に告白しちゃった。」
「え?」
陸は泣きそうになったがもっと泣き出しそうな遊月を見るとそんなキモチを吹っ飛んだ。
「ふられちゃったよ。あたしに恋愛感情はないって。あはは、当たり前だよね。わかってたんだけどね。」
遊月は泣き出した。
「遊月は俺にとってはたった一人の女だよ。俺じゃやっぱりだめなのかな?」
陸の言葉に遊月は黙って首を振り続けるだけ。
そしてさんざん泣いた後遊月は答えた。
「だめじゃない。あたし、陸のこと・・・特別だよ。だけど泉のことも特別、わかって。」
そして陸は黙ってうなづいた。
010
とある休日。
ひさしぶりに陸と遊月と泉。
三人で食事をすることになった。
「俺邪魔してるじゃん。」
と泉。
いつもどおりだと思うとせつなくなるような。
ほっとするような。
遊月の心は複雑だった。
「お前らうまくいってんの?」
と泉。
「うん、ちょっとは仲良くなれたよな?遊月。」
「そうだね。」
そして泉は言った。
「おせっかいしてごめんな。でもな、俺三人一緒にいたい。恋愛とか関係なしで。」
2人は強くうなづいた。
「もちろん!」