[番外編] 限定解除への道

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遠い世界

19歳の時、中免を取りに行った時、教習所の教官から「君は背が高いから大型に乗ったら似合いそうだ。いつかは限定解除だね。」と言われた。
でも、バイクに乗るかどうかもわかんないし、乗ったとしても400で十分だと思っていたので、限定解除など遠い世界のことだと思っていた。

憧れ

20歳になり、NC30を手に入れ、悦に入っていた俺。400以下では無敵だと思ってたし、そんじょそこらの750にも負けないと思っていた。
そんな頃、バイトに行く時、晴海通りで1台の大型バイクに遭遇。
後ろから追い付かれ、信号で横に並ぶ。ボェッボェッボェッボェッという腹の底に響くような排気音。トリコロールの派手なカラーリング。
なんだこりゃあ?VF1000R、KERKER管の2本出し。うわ、すげえ。V4に1000ccの化け物があるということは知っていたが、見るのは初めてだ。
信号が青になる。ボワェーッという咆哮とともにかすかにカムギアの音が混じる。あのバイクもカムギアトレインなのか。
VF1000Rは一気に加速し、交通量が多い晴海通りをリズミカルに駆け抜けていく。決して車の妨げにならないようなスムーズなライディング。
付いていこうと頑張ったけど、あっという間に置いていかれた。かっこいい・・・。初めて覚えた悔しさの混じった羨望の思い。

決意

21歳の夏、北海道で出会った赤黒のGSX-R750に乗る女の子Nちゃん。
北海道で3日間くらい一緒に走り、横浜に帰ってからも一緒に走った。
GSX-R750も何回か運転させてもらったけど、加速が全然違う。同じオートバイという分類ではくくれない、別の乗り物に乗っているようだ。
「私、運動神経なんてないけど、全然大丈夫だよ。こうちゃんだってきっとすぐに限定解除できるよ。」Nちゃんはそう言う。
限定解除。遠い世界だと思っていた限定解除が一気に手元に手繰り寄せられる。
この子にできたんだから、俺にもきっとできる。限定解除してVF1000Rに乗りたい。
思いは募るばかり。VF1000Rのことが頭から離れない。
よし、やったろうじゃん。1990年11月2日、静岡からの帰り道、限定解除を心に決めた。

練習

NC30を買ったバイク屋に相談する。金はないからできれば練習所には通わずいきなり試験場に行きたい。
「いきなりはきついぞ、やっぱりちょっとは慣れとかないと。」そう言うと、CB750Fを出してくれ、「これで練習しな。」と言われる。
センタースタンド掛け、取り回し、パイロンスラローム、一本橋、急制動。営業時間終了後のお店の駐車場で店員が練習に付き合ってくれる。
どうやら俺は一本橋が苦手なようだ。落ちちゃいけない、と思うと視線が近くなり、余計な所に力が入る。わかっていてもできない。
どうやっても10秒以上乗ってられない。
一本橋は無理して10秒かけなくてもいい。多少早くても落ちなければ5点減点になるだけだ。あと10点あるんだから、他で減点されないようにすればいい。
あとは加減速のメリハリを付けること。
何回か練習し、そうアドバイスされ、いよいよ二俣川の試験場へ。

限定解除(1990年11月16日〜12月20日)

うちから一番近い試験場は二俣川(バイクで15分くらい)。ほんとかどうか知らないけどここは全国的にも厳しくて有名らしい。
コースは3コースの中から当日指定されるので、3コースとも覚えてなきゃならない。結構大変。
外周から坂道に入り、管制塔の試験官に向かって名前を叫ぶ。スラローム、一本橋、急制動が前半にあって、クランク・S字・波状路・外周が後半。これらの組合せでコースが設定されている。
見ているとうまい人もちょっとどうかな?と思う人もいる。俺はどうなんだろう?
不合格になると次の試験日を指定され、そこでよければ予約を入れる。学生という立場を利用して、全部最短で予約した。
受験料は1回2,500円。練習所に入ったら何万も取られるので、だいぶ安上がり(9回で22,500円)で限定解除できたかな。

回数月日車両結果・内容
事前審査 11月16日(金) CBX750ホライゾン センタースタンド掛け、引き起こし、8の字取り回し。緊張したけど無難にこなして合格。
1回目 11月22日(木) CBX750ホライゾン 不合格。一本橋で落ちて試験中止。左折大回りを指摘される。
20〜30人受けて1,2人しか合格しない。こりゃ予想以上に厳しいな。目標10回以内で頑張ろう。
それ以前に一本橋で落ちてたんじゃあどうにもならない。
2回目 11月28日(水) CBX750ホライゾン 不合格。途中で試験中止。一本橋での秒数不足、短い区間での加速の悪さ、合図戻しの遅れを指摘される。
ん〜、まだまだって感じだなあ。普段の街乗りから試験を意識した乗り方をしてみる。
3回目 12月3日(月) CBX750ホライゾン 不合格。途中で試験中止。一本橋8.7秒、左折大回りを指摘される。
試験が終わる度に試験官が良かったところと悪かったところを指摘してくれるのは助かる。
試験を受けながら教習されてるような感じ。だんだん乗り方がわかってくる。
4回目 12月5日(水) CBX750ホライゾン 不合格。一本橋で落ちて試験中止。車線変更時の確認をもっときちんとするよう指摘される。
あ〜、また一本橋で落ちた。ちょっと自己嫌悪。ほんとに受かるのかなあ、これ。
5回目 12月10日(月) CBX750ホライゾン 不合格。波状路を出た所で試験中止。一本橋7秒台、進路変更が早過ぎ、波状路でのバランスを指摘される。
なかなか最後まで走らせてくれないけど初めて波状路まで進んだ。不安な中でもなんとなく手応えを感じてきた。
6回目 12月12日(水) VFR750K 不合格。クランク出口でコケて試験中止。コケた瞬間、スピーカーから「いやー、惜しかった〜。このまま行ってれば〜。」との声。
一本橋9.1秒、合図の戻し忘れが1回。今日走った受験者の中では一番良かったとほめられた。
コケちゃったのは悔しいけど、なんだかちょっとうれしい。
初めてVFRにあたる。CBXに比べると低速トルクがあるし、だいぶ軽くて乗りやすい。
7回目 12月15日(土) CBX750ホライゾン 不合格。一本橋で落ちて試験中止。それまではいい、この調子で、と言われる。
8回目 12月18日(火) VFR750K 不合格。初めての完走。一本橋7.8秒、確認の動作を大きく、と指摘される。
1回目の完走ではだめかあ。次も完走できれば望みがあるかな。やっぱりVFR、走りやすい。
9回目 12月20日(木) VFR750K やっぱりCBXよりVFRの方が相性がいいようだ。前回に引き続き今日もVFR。気合いが入る。今日を逃したらまたしばらくかかりそうな気がする。
無心で走り、完走。ひょっとして行けたか?合否発表の場でみんなの前で名前を呼ばれる。やった、合格だ!
今日の合格者は2人。もう一人の人は練習所に通って7回目、俺は9回目。
試験官から「7回目と9回目の差は練習所かな。2人ともおめでとう。」とのコメント。
周りのみんなが拍手で祝福してくれる。すっげえうれしい。

限定解除 限定解除

念願の限定解除。これで晴れてVF1000Rに乗れる。
免許証の裏を見るのがこんなに楽しいなんて。
でもあと1ヶ月もしないで免許更新。
その時には表の「自動二輪は中型に限る」の文字が消える。
いやー、ほんとにうれしい。喜びを噛み締める。

早速バイク屋に行き、VF1000Rを探してくれるように頼む。