ここは、香取分遣所の所長室。その部屋主である飯田少佐にに詰め寄っているのは『妙見』の機長、堀子大尉である。
「少佐!いつまで俺たちを飼い殺しにしているつもりだ!いい加減、次の作戦を実施したらどうだ!」
「まあまあ、そういきり立つな、大尉。戦争は停戦状態、貴様ものんびりと平和を謳歌するといいぞ」
「実戦に出してくれと言っているんじゃない!いつになったら偵察飛行をさせてくれるんだ、と言っているんだ!こんなところで無聊を囲っていたのでは戦死していった戦友たちに申し訳がたたぬではないか」
「そこまで言うなら飛ばせてやらんでもない。わしとて漫然と平和を謳歌していた訳ではないぞ。ちゃんと次の作戦を計画しておる・・・」
「ならば話が早い。今度はどこの城を偵察するんだ」
「うーむ、今回は江、江戸城だ」
「江戸城? そうか、今では皆目検討もつかなくなってしまった太田道灌時代の江戸城の偵察という訳か。これは飛び甲斐があるぞ」
「行って貰う時代は中世ではないのだ・・・」
「中世ではない・・・」
「つまり・・・江戸時代だな」
「徳川の江戸城?少佐、よもや手抜きをしたのではあるまいな」
「手抜きとは何だ!無礼にほどがあるぞ、大尉。計画書はここにある、さっさと飛んでこい!」
薄っぺらな飛行計画書を渡された堀子大尉は黙って所長室をあとにしたのであった。

時代は元和八年(1622)、二代将軍秀忠の時である。順調に時空転移を終えた『妙見』は江戸城に向けて高度1000mで飛行していた。
「機長、右へ15度旋回して下さい。10分ほどで目的地上空です。」
中席の航法担当、新垣軍曹からの報告である。
「了解」
堀子大尉は答えると、操縦桿を右に倒すと同時に右のフットペダルを押し込んだ。機体はゆっくりと右旋回してゆく。それにつられて磁気羅針儀もゆっくりと動いてゆく。傾いた機体から見下ろす眼下の江戸は現代の東京とは大違いである。見えるのは水田だか沼だか区別がつかないような低湿地と、ひたすら広がる雑木林ばかりである。この時代の江戸はまだまだ田舎であった。
「そろそろ見えるはずです」
そう、新垣軍曹が告げると堀子大尉は前方を注視した。緑の中に街らしきものが見えてきた。ひときわ高い建造物は天守か。
「よし、高度を下げるぞ。軍曹は偵察写真機の用意をしろ」
高度を下げた『妙見』からは江戸城の姿が手に取るように判った。
「くそー少佐め、やはり手抜きをしおったか!」
操縦桿を握る大尉の手は怒りで震えていた。もし、『妙見』に爆弾を積んでいたなら、そいつを天守閣にぶち込んでいたかもしれない。
「軍曹、撮影は終わったか。さっさと現代に帰投するぞ!道重伍長、時空転移装置に諸元を入力しろ」
「了解!」
(プ*モデ*ではないか。しかも縄張りも間違っている。天守も微妙に違うぞ)
全く納得できない大尉であった。


第二回偵察飛行戦果(江戸城偵察)
東より本丸を撮影。
天守の千鳥破風の意匠が違うような・・・。
南南西より撮影。
本丸のすぐ南に水堀なんかあったか・・・?


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参考文献 フジミ模型株式会社


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